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2017.03/01(Wed)

転機 ⑥

やっとの事で、ブラックタイガー隊の隊員たちから解放された太田は、大きなため息をついた。
こうなってしまっては、航海班がいかに自信と責任を持ってこの艦を導いているか、太田は力説するしかなかった。
はったりもいいところだ。
山本は、そんな太田を、いかにも面白そうにに見ている。
「お疲れさん。」
言葉とは裏腹な、楽しそうな山本の顔が、太田の疲労感を倍増させた。
「人ごとだと思って・・・。お前も南部とグルか。」
太田の的外れな恨みごとに、山本は、とうとう吹き出した。
「はっ、まさか!ただ俺は、南部が意味ありげに目くばせするから、何となく、話を合わせただけさ。」
「勘弁してくれよ。俺たちだって、いっぱいいっぱいなんだよ。」
「まあ、そう言うなよ。」
山本は、太田に、傍の椅子をすすめると、コーヒーを淹れてくれた。
「おかげで、みんなの気持ちも多少は落ち着いただろうよ。先が見えないって言うのが、一番つらいからな。」
山本の言うことはわかる。太田にしても、先行きが見えないから辛いのだ。
二人は、隊員たちに背を向ける形で、並んでコーヒーをすすった。

太田は、ふと、格納庫の上部を見上げた。
「南部、遅いな。」
「ああ。加藤にはいろいろ言いたいことがあるんだろう。」
山本も太田につられるように、視線を上に向けた。

「南部も辛いところだろうよ。」

山本の言葉には、明らかに、いたわりの感情が含まれていた。

太田は、黙って山本の次の言葉を待った。
手元のカップから立ち上るコーヒーの香りが、ゆらゆらと二人の間に漂っている。

「ここは、若いやつが多いし、加藤と俺とで自由にやらせてもらってるけどさ。南部の方は、そういうわけにもいかないみたいだぜ。」
「どういうこと?」
「砲術班は、叩き上げの『先輩方』が結構いるんだよ。士官学校出の新人砲術長が仕切るのは、かなり骨の折れることだと思うよ。」
山本は、一度言葉を切って、格納庫の上を見上げた。
南部が下りてくる気配は、相変わらずなかった。
「古代のやつが、あんなだろう?戦闘に関しては天才的なんだが、それ以外は、まるでなってない。古代は人間関係の築き方が下手なんだ。それを、南部と加藤とでフォローしなきゃいけないんだが、加藤ときたら、古代に押されると、つい一緒になって騒いじまう。それで、南部の負担が増えるってわけだよ。」
太田は言葉もなく、山本の顔を見つめた。山本はそんな太田から目をそらすと、呟くように言った。

「南部って、本当は、あんなに社交的な奴じゃないと思うんだよなあ。だって、俺たちと呑んでても、いつも一人淡々と、って感じだろう?まるで、酒で自分を包み隠すようにさ。もしかしたら、ずい分無理して、あんな風にふるまってるんじゃないかな。みんなに気を使って、褒めたりすかしたりさ・・・。」

山本は、苦笑いの顔で、ため息を一つついた。

太田は、先ほどの南部の様子を思い出していた。
そういえば、ここに入る前、南部は静かに自分を奮い立たせていたっけ。
─『よし、いくぞ。』ってそういうことだったのかな・・・。


それからしばらくして、南部が加藤と一緒に下りてきた。
二人は穏やかに談笑しながら、それでも加藤は幾度となく南部に謝っていた。
南部も表面上は、いつもの、穏やかで愛想のいい男だ。

しかし、太田は、その様子を、複雑な思いで見つめていた。
もう、南部に一杯食わされて冷や汗をかいたことなど、すっかり忘れていた。

     ◆     ◆     ◆

太田は、南部と連れだって居住区に戻りながら、南部の横顔を見つめた。
南部も、そんな太田の視線に気づいて、不思議そうな顔をした。
「なに?さっきのこと、怒ってるのか?」
「いや、そうじゃないけど・・・。」
南部は足を止めた。
「じゃあ、なに?」
太田は、次第に、南部のことが気の毒になってきた。
山本が言う事は、恐らく当たっている。
この男は、燃える激情も、傷つきやすい心も、すべて胸のうちにしまい込んで、それを笑顔で覆い隠しているのだろう。
南部の笑顔は、無言の拒絶だ。

─自分の心をさらけ出すのを、恐れているのか・・・?

南部は、黙ったきりの太田の顔を心配そうにのぞき込んでいる。
太田は、慌てて、適当なことを言った。
「いや・・・。さっき、ブラックタイガー隊の隊員たちを殴っただろう?あれって、隊員たちを締めるための、作戦なのかなって。あれも、計算ずく?」

「えっ・・・。あれは・・・。」
南部は意外にも、バツの悪そうな顔をした。
「あれは、ただ、キレただけ・・・。つい、カッとなって。」

南部は、恥ずかしそうに笑った。

太田もつられて、笑った。


この翌日、古代と島の衝突が再び起こることも知らずに・・・。


fin







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