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2009.09/18(Fri)

南部の憂鬱 ⑤

南部は、ポツリ、ポツリ、呟くように、心に溜まった膿を言葉にし始めた。
「バーナード星で、トモ子さんを助けただろう。彼女が妊娠してるってわかって、地球に送り返したよな。あの時の彼女の笑顔を見て、思い出したんだ。俺が最後にお姉ちゃんにあったとき、同じような顔をして笑ってたなあって。」

相原は、黙って聞いていた。
デスクの上の時計が、カチカチと、乾いた時を刻んでいる。

「お姉ちゃんは、自分の命と引き換えに、新しい命をこの世に送り出した。本当は生きたかっただろうな。自分が死ぬなんて、思ってもいなかっただろう。」
「そうだな。無念だっただろうね。」
「俺は、トモ子さんを見送りながら、何となく彼女のこれからを想像してみたりした。
『元気な赤ん坊が産めるだろうか』とか『どうやって暮らしていくのかな』とかね。」
「案外、なんとかなるものなんじゃないのか。」

南部は、相原の言葉に、フッと頬を緩めた。
「そんなものかも知れないな。だけど・・・。」
南部は一旦言葉を切って、そして核心に触れた。

「もしかしたら、地球の方が何ともならないんじゃないのか。」

「南部!」

「ごめん。それを何とかするために、俺たちはここにいるんだったよな。」
南部は自嘲気味につぶやいた。
「そして、戦いに巻き込まれて・・・。俺はまた、人を殺すんだ・・・。地球のために。」

「南部。もうやめろよ。そんな風に考えたって、辛くなるだけじゃないか。」
相原は、言葉を選んで続けた。
「俺たちは、今までもそうだったように、これからも、精一杯生きていくだけだ。明日も生きるために、戦ってるだけだ。」

「エゴだよ。」

相原は、そう呟いた南部を、ジッと見つめた。
─いつから、こいつは、こんなに追い詰められていたんだろう・・・。

南部は続ける。
「地球を守る、人類を守る。そのために戦って人を殺す?そんなの矛盾してるだろう?」
「じゃあ、黙って死んでいくのか。滅びをただ待つっていうのか?」
「・・・。」

「なあ。南部。イスカンダルが消滅したときのこと、覚えてるか?」
相原の問いに、南部は黙ったままだ。

「俺は、あの時、実は無性に腹がたった。スターシアさんが、宇宙の平和を願った気持ちは疑わない。
しかし、自分の愛する人たちを、悲しみの淵につきおとしておいて、宇宙の平和もあったもんじゃないってさ。」

今度は南部が驚く番だった。相原が、そんな風に感じていたなんて、ちっとも知らなかった。

「俺たちは何のために生きてるんだ?地球のためとか、人類のためとか、そんな大それたことのために生きてるんじゃないはずだろう?」
「・・・。」
「俺たちは、自分と、自分の大切な人たちのために生きてる。それでいいじゃないか。」

「相原。俺はわからなくなったんだ。10年前、たった一人の死に驚きうろたえた俺が、今じゃ、人の死に慣れっこになってる。こうして10年たっても、その命を想って涙が流れるのに、俺は明日も仲間の屍さえ越えて、戦わなきゃならない。」
南部は、空のワインボトルを見つめていた。


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