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2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑪

言わないことから、わかってしまう。

南部の一瞬の沈黙が、真実を語っていた。

「知ってたんだ・・・。」
南部は、視線を手元に落としたまま、ボソっと呟いた。
ユキは、予想外の南部の態度に、困惑していた。
「あの・・・。私、何か悪いこと聞いちゃったみたい・・・。」
それ以上、言葉が出てこない。

「いや。いいんだ。別に隠してたわけじゃないんだ。そのうち、みんなに知れることだと思ってたよ。」
しかし、その口調からは、決して南部が、その事実を積極的に知らせたくはなかったことがうかがえる。
「実は、ちょっと前から、生活班の女の子たちの間で噂になってたものだから。つい、気になっちゃって。」
「そうなんだ・・・。」
「でも、南部さん、ちっともお坊ちゃんらしくないから、私、最初は信じられなくて・・・。」

ユキは正直だ。
真正面からぶつかってくる。
ちっともお坊ちゃんらしくない、なんて、聞きようによっては失礼な言い方だが、南部は不思議と嫌な気はしなかった。

「親のことなんて、あんまり自分から切り出す話題でもないでしょ。それに、俺、親に反抗して宇宙戦士訓練学校に入ってもんだから、何か、バツが悪くて。それで、なかなか、みんなにも、言いだせなくってさ。」
南部は、そう言って、僅かに笑って見せた。

南部はまた嘘をついていた。
そして、その自分の嘘に、南部自身も気づいていないのかもしれない。
南部が親の話をしないのは、揺れる心をさらしたくないからだ。
最初から順を追って、整理し、もつれた糸を解していく作業が、南部には必要だった。
それは、南部の家と向き合うことであり、南部自身と向き合うことでもあった。

「そうなの。まあ、社長の息子でも、そうじゃなくっても、関係ないわね。」
ユキは、相原のインカムをつつきながら、一人で納得している。
「だって、南部さんは、南部さんだわ。」

南部は黙ってユキを見つめた。
ユキは相変わらず、相原のインカムを触っている。

─俺は、俺か・・・。

南部は、ふっと息を吐いた。
─わかってるさ。そんなこと。俺だってわかってるんだよ・・・。
南部は、ふと、母親の顔を思い出した。

─『もし地球に帰ったら・・・』

そうしたら、俺は、今度こそ、自分の足で歩いていく。
軍人として生きるか、そうではないのかはまだわからない。しかし、きっと、自分の足で歩いていく。
そしてきっと、会いに行く・・・。
その時こそ、過去の自分と決別できるはずだ・・・。

南部は、ぼんやりと、そんな事を考えながらも、まだ、自信が持てないでいた。

頭では分かっていても、感情がついてこないこともある。

南部には、まだ、時間が必要だった。



─ピピーッ、ピピーッ!

その時、けたたましい電子音が、南部の隣から鳴り響いた。
「どうした!?」
ユキは、訳がわからず、半泣きの顔になっている。
「突然、相原くんのコンソールから警告音が・・・。」
「えっ?どういうこと?」

二人であちこち探って見たが、警告音を止めることはおろか、その原因もわからない。
そうこうしているうちに、相原が血相を変えて飛び込んできた。
「もう!何するんだよ!どこか、触ったんだろう?」
ユキも南部もわけがわからず、相原がするに任せている。

すぐに警告音はやみ、代わりに、仁王立ちの相原に説教を受けることとなった。
どうやら、ユキが何気なくインカムを触っているうちに、相原のカスタマイズを変更してしまいそうになったらしい。
相原は、万が一、自分の仕様を変えられると業務に不都合が生じるので、第三者の侵入を未然に防ぐために、コンソールのあらゆる所にトラップをセットしていたらしい。

相原は、言いたいことだけ言うと、あくびをして出て行った。

南部は、ユキと顔を見合せて、笑った。



結論は先送りにしよう。
今は、愛すべき仲間たちと、この航海を成功させることだけを考えよう。

しばらくして、一瞬照明が落ちて、また点いた。
今日もヤマトに、新しい朝が来た。


fin
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15:38  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

軍人でも、次代宗主でもなく、ヤマトと言う(悪い言い方をすれば)テメェ研究所生きる。
この手の答え、大好きです。
お疲れ様です~
ナナイチ | 2009.12.03(木) 17:58 | URL | コメント編集

●優柔不断の産物です。。。

いつも、コメントありがとうございます。

実は、南部の将来の展望を、ひとつの方向に決められませんでした。。。この結末は、管理人の優柔不断の産物です。
結論を先送りにしたのは、私。
おいおい考えるということで。今後の展開をお待ちください。

chakichaki | 2009.12.04(金) 08:55 | URL | コメント編集

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