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2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑩

「そんなに、気にしなくても大丈夫だよ。」
南部は、努めて明るく振る舞った。
どんな理由であれ、ユキの寂しそうな顔は見たくなかった。
「古代だって、森さんが悪気がないことくらいわかってるよ。」
「でも・・・。」
ユキは、相変わらず、浮かない顔だ。
「悪気はなくても、傷つけちゃったわ。」

─森さん。古代のために、こんな顔するんだ・・・。

南部は、こっそりユキの横顔を盗み見て、ため息をついた。自分のことでもないのに、どうしてこんなに気が滅入るのか、説明がつかない気持ちを、すっかり持て余してしまった。
ユキとの当直で、少しばかり弾んでいた気分も、行き場を失ってもやもやする。

─あーあ。今日は、何から何まで、最悪だ・・・。

南部は、手持無沙汰な指先を、コンソールの上で意味もなく動かした。
計器のランプはすべて、正常値を示している。聞きなれた電子音も、変りない。
相変わらず、静かな夜だった。

     ◆     ◆     ◆

「あらっ?南部さん、眼鏡・・・。変えたの?」

南部は、不意打ちを食らって、咄嗟にユキの顔を正面から見た。
「えっ・・・。」
さっきまで、浮腫んだ顔を見られまいとして、極力向き合うのを避けていたのに、うっかりユキを見つめてしまったのだ。
ユキは、大きな瞳を見開いて、何も言わず南部の答えを待っている。

南部は、咄嗟の言い訳に焦って、ユキの表情が、一瞬、曇ったことに気がつかなかった・・・。

「ああ。これ・・・。実は、いつものヤツのフレームが壊れてさ。眼鏡がないと仕事にならないから、いつもスペアを持ってるんだ。」

南部は、ぎこちなく笑って、眼鏡のフレームを人差し指で持ち上げた。

「そうなの・・・。その、黒縁眼鏡も、似合うわよ。」
ユキは、いつもするように、小首をかしげて笑った。
やわらかく髪が揺れ、少し甘い匂いが周囲を包み込む。
─いい匂いだな・・・。
南部も、ユキの笑顔につられて、自然と頬が緩むのを感じた。


「ところで、南部さんって・・・。」
ユキは、静かに続けた。
「あの南部重工の社長の息子さんだって本当?」

南部は、今度こそ、言葉を失った。

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