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2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑦

南部は、居住区へ続く通路を、足元を照らす常夜灯の明かりを頼りに歩いていた。
数メートル間隔でほのかなに足元を照らす灯りのオレンジ色が、一定のリズムで南部の横顔を朱に染める。
うなだれて歩く後ろ姿からは、とても、砲術長として声を張り上げている普段の彼の姿を想像することはできなかった。

─誰にも会いたくない・・・。

幸い、居住区に人影はなかった。

南部は、自室にたどりつくと、灯りもつけずベッドに倒れこんだ。
乱暴に靴を脱いでその辺りに散らかし、サイドテーブルの上の時計を、手で払いのける。
床に転がった置時計の、硬質な衝突音が、無性に癇に障った。

南部は、次の瞬間、衝動的に眼鏡を外すと、その時計めがけて投げつけていた。

とたんに、南部の視界がぼやけてくる。
ベッドの縁に座って、頭を抱えて、そして、声を殺して泣いた。

何も話したくないし、何も考えたくなかった・・・。


     ◆     ◆     ◆

気がつくと、もう、当直の時間だった。
こんな日に夜勤当直なんて、どうしてこんなに間が悪いのだろう。
本当は、誰かに代わってもらいたいところだが、そういうわけにもいかない。
それに、交代の理由を探して、誰かに頼むのも面倒だった。

シャワーを浴びて、着替えながら、何気なく鏡を覗きこんで、驚いた。
泣きはらした目がむくんで、ひどい顔だ。
─何て、顔だよ・・・。
南部は、鏡の中の自分に、力なく笑った。
鏡の中の自分は、まるで知らない顔をして、うっすらと笑い返してくる。

『きっと帰る!この戦いを終えて帰ったら・・・!』
もし、あと少し時間があったなら、自分は、あのあと何と言ったのだろうか。
南部は、もう一人の自分の視線に耐えかねて、むくんだ眼を伏せた。


─とにかく、急がなきゃ。
当直に遅れるわけにはいかない。
慌てて身支度を整えて、眼鏡を探した。

─ああ・・・。

フレームの曲がった眼鏡の残骸が床の上に転がっていた。




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