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2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑥

「母さん・・・。」
南部は、不用意な言葉で母親にショックを与えたことを悔やんだ。これ以上、話し続けることは、母にとっては酷なことかもしれなかった。

しかし、許された時間はあとわずかだ。
この機会を逃したら、もう二度と、自分の気持ちを伝えることはできなくなるかもしれないと思うと、南部は、是が非でも、たとえ母親を悲しませることになってでも、言っておきたいことがあることに気がついた。

「母さん・・・。」
母は、涙をぬぐって顔をあげた。
「戦いは激しくなってきたけど、大丈夫・・・。ここには仲間がいるから。」
南部は、無意識に仲間という言葉を口にして、その温かい響きにふっと頬を緩めた。
母親は、息子のそんな表情の変化を見逃さなかった。
「そう。仲良くやってるのね?良かった。」
母の精一杯の作り笑いは、かえって悲しみの大きさを物語っていた。
美しい頬に赤みはなかった。


「俺が今、ここで何をしてると思う?もしかしたら、もう知ってるのかな・・・。俺、ヤマトの砲術長なんだ。」
モニターの向こうの母親は、驚かなかった。

─やっぱり、知ってたのか・・・。

母親は、息子が、その若さでヤマトの砲術長に抜擢されたことを知っていた。南部重工の商売柄、そのくらいの情報はどこからでも転がり込んでくる。
息子に決して明かすことはできないが、訓練学校での成績も生活ぶりも、果ては交友関係まで、母親の耳には届いていた。

「俺は、ヤマトに乗って初めて、本物の大砲をうった。ヤマトの主砲の威力は凄いよ・・・。南部の技術は本物だね。」
南部は、自分自身を奮い立たせて、言葉をつなぐ。
「・・・力を生み出すものは、その力の使い方を知らなきゃいけないんだ・・・。家を飛び出した時は、そんな事まで考えてなんかなかった。ただ、感情的になって、反発してただけさ。でも、実際に、銃を手にして戦ってみて気づいたんだ。この力を無制限に使っちゃいけないんだって。そうでなきゃ、あんなもの、ただの人殺しの機械じゃないか・・・。」
南部は、胸のうち息苦しさもろとも、吐き捨てるように言った。

「それで、康雄は、軍人になったの・・?」
母親の声は、以外にもはっきりとしたものだった。
「それであなたは、力を使う人になったのね。」

力を使う人・・・母親の言葉には、悲しい響きがこもっていた。

母親の瞳に射抜かれて、南部は言葉を失ってしまった。

しかし、ここであきらめるわけにはいかなかった。
南部の本当に伝えたいことは、他にあるのだから。

「母さん。聞いてよ。地球に居たって、緩慢な死を待つだけだ。それに、俺は、高みの見物なんてしたくなかったんだ。俺は、この手で、平和を勝ち取りたいんだよ!」
この数年来持ち続けてきた、心のわだかまりを一気に吐き出すように、大きな声を張り上げた。
一旦、心のタガが外れてしまうと、南部は自分でも何を言っているのか、何が言いたかったのかもわからなくなってしまった。
「平和のために戦うなんて、ナンセンスだよ。だけど、他にどうしようもないじゃないか。俺は、まだ諦めたくないんだ。地球も、自分も、何もかも!」

まるで、南部の叫び声が合図のように、モニターの画像が乱れ始めた。

「母さん!俺は帰る。きっと帰る。この戦いを終えて帰ったら、そしたら・・・!」


交信は切れた。
モニターの明かりは消え、再び訪れた静寂と、規則正しい電子音が南部を包み込む。

南部はうなだれたまま、指一本動かすのも、億劫だった。

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15:27  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●お話のイメージをありがとう。。。

南部の生い立ちから家出説、その真意・・・。
お話のイメージを膨らませるための、種をわけてくださったあなた!
ありがとう。。。
chakichaki | 2009.11.21(土) 23:07 | URL | コメント編集

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