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2016.11/13(Sun)

さよならをするために ④

「ああ、南部さん。よかった。あんまり遅いから、今呼びに行こうと思ってたところよ。」
交信室の前まで行くと、ユキが笑顔で近づいてきた。
「ごめん。ちょっと、他で用事があったもんだから。」
南部は、適当に言い訳した。
「後は、古代くんだけね。」
乗組員名簿を片手に、ユキはため息をついた。
─古代は、来ないよ・・・。森さん、古代のこと、知らないのかな・・・?

南部も、ユキに気付かれないように、そっとため息をついた。

─本当は、俺も来るつもりなんて、なかったんだ。でも、古代にあんな風に言われると・・・。

交信室の前に長く延びていた人の列は、もう、あと5人ほどになっていた。
南部は、整理のつかない心の内をごまかすように、ユキに話しかけた。

「森さんは、もう地球との交信は済ませたの?」
「ええ。手の空いた時に済ませたわよ。」
ユキはにっこりとほほ笑んで、南部を見上げた。
─森さんって、きっと育ちがいいんだろうな・・・。
南部は、ユキの屈託のない笑顔が好きだった。
こんな殺伐とした、明日をも知れない戦いの中にあって、ユキはいつも温かい笑みを向けてくれる。

「きっと、ご両親は心配してるんだろうね。」
南部の言葉に、ユキの表情は複雑だ。
「ええ。パパとママの顔を見たら・・・。悲しくなっちゃって。少し、泣いちゃった。」
そして、ふふっと笑った。
「でもママったら。お見合い写真ばっかり見せるんですもの。」
南部は、あまりに意外なユキの言葉に、思わず吹き出した。
「ええっ?森さん、結婚するの?」
「まさかあ!結婚なんてしないし、第一、お見合いなんてしないんだから!」
ユキは、真っ赤な顔をして口を尖らせた。
南部は、ユキのそんな表情をみて、思い当るところがあった。
「へえ。森さん、もしかして、ヤマトの中に誰か好きな人でもいるの?」
「ちょっと!南部さんまで!もう、知らない!」

─図星か・・・。森さんの好きな人って、アイツかな・・・?それとも・・・。

南部は、ユキに謝りながら、同僚の顔を思い浮かべていた。

     ◆     ◆     ◆ 

そうこうしているうちに、南部の順番になってしまった。
出来ることなら、このまま引き返したい。
─今さら、いったいどの面下げて・・・。
南部の心は揺れ動いていた。

それは、南部が家を出てから、3年という月日をかけても断ち切ることのできなかった、情の証しでもあった。
断ち切ることもできなければ、受け入れることもできない・・・。
その厄介な感情が、南部自身を苛んできたのだった。

ユキは、南部を交信室に押し込んだ。
南部の心のうちの葛藤など、知るはずもない。
南部を、交信機の前に座らせると、その傍で、使い方の説明をしている。
南部は、このタイプの交信機の使い方なら、知っていた。南部だけではない。おそらく、第一艦橋詰めの乗組員はみな扱えるはずだ。
しかし、南部は黙って、ユキが説明するに任せていた。

傍でユキが動くたびに、ふわりと、何か甘い匂いが鼻をくすぐる。
自分には、決して無い匂い─
南部の胸に、説明のつかない感情がこみ上げた。

それは、女の人の匂い・・・。おそらくは、遠い昔に感じたであろう、母の匂いだった。
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