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2016.11/13(Sun)

秘密 ⑦

11月にしては、暑すぎる毎日が続いていた。昼前の陽射しが、車の窓から差し込んでくると、汗ばむほどだ。太陽の異常は、早くも地上に影響を及ぼし始めていた。

晶子は、車の窓を半分ほど開けた。生ぬるい風が晶子の頬にあたって、髪を揺らした。
あの日・・・晶子が鞄一つで南十字島に飛んだ日。
二人の運命は動き始めたのだ。
晶子は、窓の外を流れる街を眺めながら、あの日のことを思い出していた。

  ◆     ◆     ◆

晶子が南十字島に着いたのは、ユキからのメールをもらった翌日の朝9時過ぎだった。
タクシーを拾って、教えられたホテルに急いだが、事はそう簡単には運ばない。

相原は、既にチェックアウトしていた。

晶子は、呆然とした。
最後の望みは絶たれたのだ。
もう、涙も出ない・・・。あとは、いつとも知れない帰還の日を待つしかないのだ。

晶子は、空港に戻らざるを得なかった。

疲れた足を引きずって空港のターミナルに入ると、床に落ちた小さな塊に気がついた。
─あらっ?
それは、小鳥の死骸だった。

晶子は、思わずそれを拾い上げた。
小さな骸は、硬く、冷たかった。
そして、今や、晶子の心もまた、硬直していた。
─これは、私・・・。私は所詮、籠の鳥。どうあがいてみても、どうせ、飛び立てやしないのよ。

その時、突然、どこか聞き覚えのある声に呼び止められた。

「どうかしたんですか?」

相原だった。

「あの・・・!」
あまりの事に、晶子は言葉を失った。
この人に会うためだけにここに来たというのに、いざ、本人を目の前にすると、何も言えなくなってしまった。

「可哀そうだから、どこかに埋めてあげたいんだけど、どこにも土がなくて・・・。」
しどろもどろになりながら、咄嗟に思いついたことを口にした。

「滑走路のわきならあるよ。行こう!」
そう言って、先に立って歩く相原の背中を見ながら、晶子はもどかしさに窒息してしまいそうだった。

─あなたに会いに来たんです。
どうしてもその一言が言えない。

晶子は黙って、小鳥の骸を埋めた。相原も何も言わず、それを見つめている。
晶子は、相原の視線を感じて息が止まりそうだった。自分でも訳のわからない感情が暴走して、ちょっとでも気を抜くと、涙がこぼれてしまいそうだ。

晶子は、傍にあった野菊を摘むと、必死に涙を堪えて立ち上がった。
そして、精一杯の笑顔で、一輪の野菊を差し出した。

「小鳥さんからのお礼よ。どうも、ありがとう。」

晶子は、走り去った。
こぼれる涙を見られたくは無かった。

しばらくして、ターミナルの向こうから飛び立つ軍用機が見えた。
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