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2016.11/13(Sun)

秘密 ⑥

こうして、ユキとの密やかな交流が始まった。
しばらくは、お互い遠慮がちだったメールの内容も、次第に、打ち解けたものへと変わっていった。

ユキは、忙しい合間をぬって、まめに返事をくれた。
やり取りの大半は、ありふれた女の子の会話・・・。もしかしたら、ユキもこんな他愛のないメール交換を、誰かと楽しみたかったのかも知れない。

晶子にしてみれば、ふだん知る事もない、防衛軍本部職員の日常に触れる、貴重な機会だったし、折にふれ、さりげなく知らせてくれる相原の様子にも、心が躍った。

しかし、こんな少女のようなささやかな喜びも長くは続かなかった。

結局、それが最後になってしまったユキからのメールには、今回の緊急招集の件、そして、極秘裏にヤマトが発進する事が手短に記されていた。
『明日、正式に辞令がおります。軍の任務で、南十字島の管制センターにいる相原くんにも、明日の朝一で辞令が下りるはずです。一旦、島を離れてしまったら、ヤマト着任まで、もう彼の行動を把握することはできません。』
そして、こう続けられていた。
『ヤマト着任後は、会うことも叶わないでしょう。帰還の目処も立っていません。晶子さんに、まだ彼を想う気持ちがあるのなら・・・。これが最後のチャンスだと思って・・・。』

メールの最後に記された、南十字島のホテルの住所を見ながら、晶子は、一瞬、気が遠くなるような気がした。
自室の窓から見える午後の海は、次第に霞んで色を失っていく。
押し寄せる後悔の念・・・。

─『次はないかも知れないのよ。』

初めて出会ったあの日に、ユキに言われた言葉が、にわかに現実味を帯びてくる。

─嫌・・・!

晶子は、素早く身支度を整えると、鞄一つ抱えて家を出た。

     ◆     ◆     ◆

─会ってどうするというのだろう・・・。

晶子は、空港に向かう車の中でふと思った。

─何と言って声を掛けたらいいのかしら・・・。

自分の浅ましい思慕を、彼は軽はずみだと笑うだろうか。
しかし、晶子は、すぐに思い直した。

─そんなこと、どうでもいいわ。ただ、会いたいのよ。

晶子は、自分の中に潜んでいた激情に、軽い目眩を覚えた。

「お嬢様。よろしいのですか?黙ってお出かけになっても・・・?」

運転手の穏やかな声が、晶子の意識を引き戻した。

「ええ。」
そして、晶子は、はっきりと告げた。

「お父様とお母様には、私は急用で出かけたと伝えて下さい。明日には戻りますから、詳しいことは、帰ってから説明します、と。」
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