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2016.11/13(Sun)

秘密 ⑤

そのあとのことは、よく覚えていない。
ユキに連れられて、平九郎と対面して、そして、どんな話をしたのか・・・。
慌てて走り去った、相原の恥ずかしそうな顔ばかり思い出されて、心ここにあらずだ。

そんな、孫娘の心の内を知ってか、知らずか・・・。
「晶子はここの仕事に興味があるのかな?」
「はい。おじい様。」
晶子はとっさに、口をついて出た自分の言葉に、驚いた。
そして、勢いに任せて言葉をつづけた。
「私、こんな緊張感は、初めて。今まで、私の生活の中にはなかった世界だわ。それに、地球のために働いていらっしゃるなんて、素晴らしと思う。私も、卒業したら、ここで働きたい。」

言ってしまった事は、なかったことにできない。
平九郎が、予期せぬ返答に面食らっている。晶子は、この場を納める術を知らなかった。
一瞬の、気まずい空気・・・。

「失礼します。」
ユキだ。
「長官。そろそろ、ご準備なさってください。定例会のお時間です。」

平九郎は、晶子に、その話はまた、と話を濁して席を立った。
晶子にしても、とっさに出た言葉が、こんな衝撃を与えるとは思ってもいなかったので、ユキの出現に救われたような気がした。

「晶子さん。」
ユキは、平九郎が出て行ったのを確認してから、話しかけた。
「長官は、あなたがかわいいのね。多分、あなたには、辛い思いはさせたくないのよ。」
「ユキさん?」
「ごめんなさいね。さっきも言ったけど、本部内に、プライベートは無いのよ。ここでの会話は、秘書室に筒抜け。」
晶子は、二の句がつげなかった。
「いいタイミングだったでしょう?あれ以上話が」長引くと、あなたが聞かれたくない事まで、秘書室に流れそうだったから。」

─そうだったの。ユキさんは、話の成り行きを見守っていたんだ。何も知らない私が、余計な事をしゃべる前に、止めてくれたということね。

晶子は、もう、驚くのにも疲れてしまった。
黙ってうつむく晶子に、ユキは、優しく微笑んだ。
「さあ。行きましょう。これからのことは、ゆっくり考えるといいのよ。まだ、学生さんでしょう?卒業までに、ゆっくり、ね。」
ユキに連れられて部屋を出た。迷路のような通路を抜けて、正面のロビーにたどり着いた。

晶子は、丁寧に、今日の礼を言った。
本当は、相原のことを聞いてみたい。でも、晶子には、その勇気がなかった。
仕方なく、通り一遍のあいさつをして別れようとしたとき、ユキが、少し考えて、驚くようなことを言ったのだ。

「もし、よかったら、今日の食事会に一緒にいらっしゃらない?長官のこと、みんなには内緒にしててあげるから。私の知り合いっていうことで。」
「えっ・・・。」
「相原くんなら大丈夫。彼、きっとあなたの顔、覚えていないと思うわよ。」

ユキの真意がわからない。なぜ、そんな事を言うのだろう。
─なぜ、急に私を誘うの・・・?

「この次は、ないかも知れないのよ。」

ユキの声が真剣なので驚いて見つめた。
「私たち、そういう世界に生きてるの。いったん事が起これば、すべてを投げうって、宇宙に出ていく。
今は地上勤務だけど、相原くんだって例外じゃないわ。」
「えっ。」
思わず、声をあげた。
「やっぱり。」
ユキは、ため息混じりに苦笑いの顔だ。
「気になったでしょう?彼のこと。」
「そんな・・・。」
晶子は、すっかり見透かされて、恥ずかしさの余り、うつむいた。
「彼、ヤマトで通信長をしていたの。最初の航海からずっとね。今は、本部付きだけど、ヤマト出撃の際には、また最前線に送られるわ。私もね。それは、今日かもしれないし、明日かも知れない。」

ユキは、優しい、いたわりの表情で、黙ってうつむいている晶子を見つめた。
「今日はじめて出会って、好きかどうかなんて、わからないわよね。でも、もし、心に残ったのなら、行動しないとだめよ。特に、彼、自分からは行動しない人だから。」

ユキは、それ以上何も言わなかった。その代り、メールアドレスを教えてくれた。
「私のプライベートのアドレスだから、いつでも連絡して。防衛軍の仕事に興味があるのなら、そちらも何かの手助けになるかも知れないでしょう?」
そして、こう付け加えた。

「このアドレスに関しては、完全に、秘密は守られるから、安心して。」


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