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2009.10/13(Tue)

異変 ⑫

「随分、良さそうだな。」
古代は、ベッドの傍の椅子に腰をおろした。
「この部屋・・・?良い匂いだな。」

部屋の隅に置かれた加湿器から立ち上る蒸気が、やわらかな香りを部屋中に運んでくれる。

─南部さんが嫌じゃなければ、香りつきにしてあげましょうか?

古代が来る少し前、ユキが、加湿器にアロマオイルを差していったのだ。
無機質な白い部屋に漂う甘い香りは、少し場違いな印象だった。


─カモミールには、鎮痛・鎮静作用があるのよ。
古代は、さっき立ち寄った医務室で、ユキが言っていたのを思い出した。
─南部さん、まだ完全じゃないみたいよ。私には、もう良くなったって言ってるけど。

─まったく、仕方のないやつだな・・・。
古代はユキの報告を思い出して、一人、心の中で苦笑した。

       ◆     ◆     ◆


「砲術班はどうなってる?」       
南部の一番気になっていることだった。
「誰も泣きついてこないところを見ると、俺なんかもう用無しってとこかな?」

南部の言葉を聞いて、古代は、安心した。こんな、軽口が叩けるくらいなら、事態は最悪には至っていないようだ。
古代は、砲術長の代理も立てずにいる現状を、簡単に説明した。

「それなら、なおさら、すぐにでも退院させてくれよ。」
南部はベッドから身を乗り出した。
「慌てなくても、じきに召集をかけるさ。」
ジッと見つめる南部に、古代は静かに告げた。

「その時は、たとえどんなに体調が悪くても、砲術長として、作戦の指揮を執ってもらう。」

南部は、古代の有無を言わせない口調に、一瞬戸惑ったが、すぐにうなずいた。
─大丈夫。出来るさ。これまでも、なんとか折り合いをつけてきたんだから・・・。
「任せとけ。」

古代は、南部の、その一瞬の戸惑いを見逃さなかった。
─やっぱり。まだ、体調が戻ってないんだな。

一瞬の沈黙・・・
均衡を破ったのは、南部だった。
「何か、話があってきたんだろう?」
「ああ。まあね。」
「何だよ。はっきり言えよ。」
すると古代は少し俯いて、呟くように話し始めた。
「実は、俺、南部に謝らないといけない事があってさ。」
「俺に、謝る?」
「ああ。」

古代は、一息ついて、気持ちを振りきるように続けた。
「俺たちは、幾つもの星を滅ぼしてきた。大勢の仲間を失って、ボロボロに傷ついてそうやって手にしたものって何だろうな。」
南部は、ただ、黙って聞いている。
「エゴといってしまえば、その通りだよ。」
南部は、驚いて、古代を見た。古代は、相変わらず、視線を落として話し続けた。
「お前が、苦しんでいることは随分前から知っていた。佐渡先生から、南部が倒れた原因は、過労とストレスだって聞いて、すぐに思い当たった。戦い続けること、ヤマトに乗り続けること自体が南部のストレスなんだろうって。」
南部はもう、言葉もなかった。

「お前は砲術も射撃の腕も一流だよ。だが、それが、余計にお前を苦しめていることも、わかってたさ。」

古代は、顔をあげて、まっすぐに南部を見据えた。
「わかっていて、それでも召集した。ヤマトの砲術長は南部以外には考えられなかったから。」

二人の視線がぶつかった。
先にそらしたのは、古代の方だった。

「古代。もういいよ。」
南部は自分でも驚くほど穏やかな声で話しかけていた。
「俺だって、わかってるんだ。やるべきことは、わかってる・・・。」
目の前でうなだれる古代は、まるで、さっきまでの自分だった。

「わかってても、時々嫌になるんだ。俺は、何してるんだろうって考えたりさ。」
南部は、笑った。
「でも、もういいよ。古代のそんな顔見てたら、どうでもよくなったよ。」

部屋には、相変わらず、カモミールの甘い香りが漂っている。

「俺たちの進む道は、修羅の道だ・・・。」
古代の声が、いつもよりも湿っている。
「自分が、選んだ道さ。」
南部は、納得するしかないと思う。納得できなくても、結論は、同じだ。
軽い頭痛と目眩がする・・・。
─こいつとも、気長に付き合うか・・・。

「この次は、ぶっ倒れる前に一言言ってくれよ。部下の愚痴ぐらい聞いてやるからさ。」
古代は、そう言い残して病室を後にした。

翌日、南部は、職務に復帰した。




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