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2009.10/05(Mon)

異変 ⑨

相原は、サーバーから立ち上るコーヒーの香りを思い切り吸い込んだ。
─いい豆だな・・・。
カフェインには常習性があるらしい。相原は、典型的なカフェイン中毒だった。

相原は、コーヒーを淹れながら、何気なく古代の方を見た。
その横顔は、既に、艦長のものだった。
訓練学校時代の迷い荒れていた顔とも、沖田艦長に叱咤され必死にガミラスと戦っていた頃の顔とも違う。古代こそが、この艦の責任者なんだと、改めて思う。

二十歳やそこいらで、艦を任された友は、自分の手の届かない処へ行ってしまったような錯覚に陥る。
それと同時に、古代の顔からは、若者らしい快活さが消え、必要以上に艦長の枠に自分を閉じ込めてしまっているようにも思えた。

─微かな嫉妬と憐み・・・。

相原の心が、かさかさと音をたてた。


「ごめん、相原。待たせたな。」

気がつくと、古代は立ち上がって、少し照れくさそうに微笑んでいた。
「いいよ。艦長ともなると、決裁も半端な量じゃないんだな。」
「ああ。俺の一番苦手な仕事だよ。」
古代は、大げさに肩をすくめてみせた。

相原から、紅茶を受け取ると、古代はベッドに腰を掛け、相原に傍の椅子をすすめた。
「普段は、こっちの方が落ち着くんだ。艦長執務室なんて、柄じゃないだろう?」

相原は、今、目の前にいるシャイで物静かな男こそ、本来の古代進なんだと思う。こんな時代に生まれなければ、軍人になんかならなかっただろう。
それは、古代に限ったことではない。俺たちはみんな同じだ。
しかし、望むと望まざるとにかかわらず、俺たちはこの道を歩き始めてしまった・・・。

両手でカップを包んで、背中を丸めるようにして紅茶に口をつける古代の姿が、相原は哀しかった。


「南部のことなんだが・・・。」
古代は、カップを傍のテーブルに置くと、本題に入った。
「近頃、何か変わったことはなかったか?」
「ああ、そうだな・・・。」

相原の脳裏に、酔えない酒をあおって泣いた、あの時の南部の姿がよみがえる。

─言ってしまおうか・・・。

相原は、一瞬迷って目を伏せた。
あの時のことは、誰にも話さずにいた。

「やっぱり、何かあったんだな。」
古代はため息をついた。
「俺にも言えないようなことなのか。」
まっすぐに飛び込んでくる古代の視線を避けるように、相原は何も言えず俯いてしまった。
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