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2009.10/01(Thu)

異変 ⑦

その頃、ユキは医務室にいた。
南部のことが落ち着くまでは、調理場の方幕の内と土門に、第一艦橋の方は太田に、それぞれ任せ、出来る限り医務室に詰めるようにしていた。
生活班長としての彼女の仕事は多岐にわたる。特に、女子乗組員が退艦してからは、多忙を極めていたが、ユキ自身、南部のことが気がかりだったし、またそうすることが艦長たる古代の希望でもあった。

南部の状態は落ち着いている。本来なら、もう職務に戻っても良いはずだった。
しかし、どういうわけか、古代が南部の退院をしばらく引き延ばしてほしい、というのだ。何か、考えがあるのだろうが、ユキにも、真意を話してはくれなかった。


─ピピーッ、ピピーッ。

医務室に、電子音が鳴り響いた。
南部のベッドに取り付けられているセンサーが反応したのだった。

─南部さん、起きたのね。

ユキは、数えかけた薬品の小瓶を棚に戻すと、南部の病室に向かった。

ユキがノックをして入ると、南部はベッドを起こして点滴のしずくを眺めていた。

「南部さん。気分はどう?」
「最高ですよ。」
ユキの問いかけに、南部はニヤリと笑った。
ユキもつられて頬が緩んでしまう。
「顔色も良いようだし、もう大丈夫ね。」
ユキは、残り少なくなった点滴のバッグを目で確認すると、手際よく、検査キットを広げていく。

「また、採血ですか?」
あまりにも不満げな南部の声に、ユキは吹き出してしまった。
「まあ!南部さん、まさか注射が嫌いなの?」
「こんなもん、好きな奴の方が、少ないでしょ。」

実際、南部は注射が嫌いだった。

「それに、この点滴も何とかして下さいよ。もう、いいでしょう?」
「そうね。それだけ言える元気が戻ったんですもの。そろそろ、いいかもね。」
ユキは、手を止めることなく、にこやかに応じた。

あっという間に、ユキは仕事を済ませて検査キットを片づけると、枕元のタオルやカバーを交換した。
「さあ。これで、気持ちよくなったでしょう?」
ユキは汚れものを小脇に抱えて、妙に満足げだ。
「ユキさんに看病してもらってるところ、古代が見たら、怒るかな。」
「ふふっ。さあ、どうかしら。」
ユキはふわりと髪をゆすると、優しく笑った。

「もう、退院していいんでしょう?」
南部は眼鏡をかけると、髪の毛をかきあげた。
「もう、頭痛も目眩も止まったし。これ以上寝てたら、体がなまっちゃいますよ。」
少しやつれてはいるが、こうして話している限り、いつもの南部だ。
南部の問いに、ユキは静かに答えた。
「それは、この検査の結果が出てからね

─嘘だ。   

南部の検査結果はとっくに出ている。どこにも異常はなかったのだ。
ただ、過労とストレス─おそらく古代は、このストレスの元を探りたいのだろう・・・。しかし、今、それを南部に伝えるべきではない。

「どこか、悪いんですか?俺?」
それに対して、ユキはなるべく自然に答えた。
「いいえ。多分、過労だと思うわよ。最近、休む間もなかったんでしょう?」

そして、こう付け加えた。          
「一応、念のためよ。」

ユキは、にっこりとほほ笑んで、いぶかしがる南部の病室を後にした。







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