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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑯

太田は、鳴り止まない携帯を探して辺りを見回した。
この着信音は自分のものではない。島も同様にキョロキョロしている。

「相原のか?」

太田は、寝込んだ相原をひっくり返して、ズボンのポケットから彼の携帯を引っ張り出した。
携帯の表示で相手を確認すると、ちょっと驚いたように、へぇっと声を上げて電話に出た。

「もしもし…?」

太田は島に目配せをしながら、一言二言喋って、ニヤリと笑いながら電話を切った。

「誰?」
「意外なヤツ。」

そして、太田はその辺りに散らかった、空き缶やつまみの袋を簡単にまとめると、引っ越しの段ボールを部屋の隅に押しやった。

「どうしたんだよ!?急に片付けだして。」
「お前もその辺のゴミを袋に入れろよ。『大切な』お客様がくるんだからさ。」
「はぁ!?」

わけがわからない島を尻目に、太田は手際よくリビングを片付けた。

「あっちの部屋は仕方ないか。肝心の部屋の主が酔い潰れてるんじゃあ、勝手に荷物を動かせないし。」
島は、リビングの隣の洋間を見た。奥のベッドの周りには、洋服のはみ出した段ボール箱やカバンが無造作に置いてある。
「なあ、太田。さっきの電話、誰なんだ?」
「さあね。だいたい想像つくだろ。」

島が太田のつれない返事にカチンときて、そこら辺のタオルやら何やらをバスルームの方へ投げつけたとき、玄関のチャイムが鳴った。

「ほいきた。」

太田は、怪訝な表情の島をまるで無視するかのように玄関の扉を開けて、客人を招き入れた。

そして、太田の後ろから、遠慮がちにキッチンを覗きこんだのは、ユキだった。
「ユキ・・・。」

先程、タオルを投げつけたままの姿勢で立ち尽くし、目を丸くして彼女をみつめる島は、予想外の展開に完全に混乱して、すっかり毒気を抜かれてしまった。

「あのね、エアカーが・・・。もう走ってなかったものだから・・・。」

ユキは、恥ずかしそうに笑った。

島は慌てて、部屋の入り口で所在無げに立つ彼女に声をかけた。
「あ、ああ。まあ、入れよ。」

彼女はいつものように、ちょっと首をかしげて微笑んでいる。
「ごめんなさいね。男同士の時間を邪魔しちゃって。」
「いいんだ。君なら男も女も関係ないさ。君は特別だからね。」

―俺、何言ってるんだ・・・!

しかし島のその言葉に、ようやく安心したユキは、少し悪戯っぽく笑った。

「特別って、どういう意味?つまり、私は女として意識してもらえないって事かしら?」

そう言いながら、酔い潰れて眠る相原の上着をかけ直してやると、まるで猫かウサギを撫でるように、その茶色がかった髪を撫でて笑った。

―君は何もわかっちゃいない・・・!

彼女の何気ない仕草の一つ一つが、島の酔った頭を締め付ける。
その無邪気な横顔の美しさに、島は思わず息をのんだ。

その時、背後から声がした。
「遅くなってごめん・・・。」

島は、もう一人、自分の心も知らず、バツの悪そうな顔の男が居ることに気が付いた。

部屋の入り口でニヤケる太田の後ろには、南部が立っていた。


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