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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑬

「さあ・・・。なんでかな・・・。」

ユキの問いに南部は答えられなかった。

―防衛軍に残った理由か・・・。

もちろん、理由はいくつかある。復興途上の地球のために尽くしたいし、そのために自分が出来ることをしたかった。

しかし、それだけではない。

もしかしたら、あの凄惨な戦いの記憶に心を苛まれながらも、その中にしか生きる目的を見出だせないのかもしれない。
未だにこの新しい地球に馴染めないでいる事の証なのかもしれなかった。

「他に思い付かなかったから。俺は、他に、生きる方法を知らないんだ。」

南部の言葉が、暗い丘の上に響いた。
自分でもはっきりとわからない事を、他人に説明できるわけもない。かと言って、適当にその場かぎりの嘘をつけるほど、いい加減な人間ではなかった。
出来れば、この一言で、この話題は終わりにしたかった。


「そうなの。」

ユキは、ふふっと笑って空を仰いだ。

「同じ事を言うのね。あなたも…。」

南部はそんなユキの横顔を黙ってみつめていた。
白い首筋に小さな星が、キラキラしている。丘の上に吹き上げる風がその輝きを僅かに揺らしていた。

「古代も、そんな風に言ったの?他に生きる方法を知らないって?」
「ええ。それから、こうも言ったわ。『宇宙に出てる方が性に合ってるんだ』って。」

―はっ!バカ言ってるよ!

ユキの言葉を聞いて、南部は心の中で吐き捨てた。

―あれほど求めた家族の愛じゃなかったのか。やっと、帰れる場所が出来たっていうのに。大切な人をほったらかしにして、何が宇宙だよ。


南部はユキの寂しそうな横顔を見ながら、古代の困った顔も思い浮かべてみた。
そして、南部はため息をついて、心にもない事を口走っていた。

「わかるよ。なんとなく・・・。古代の気持ち。」

―わかるもんか!あのバカの気持ちなんか!

南部の胸の奥では、相反する2つの感情が渦巻いている。
本当は、わからないわけでもない。南部も、現に、艦隊勤務を希望して宇宙に出ている。大切な家族を残して・・・。
様々な葛藤を一先ず乗り越えて、家族の元に帰ってみたものの、南部も古代同様、どういうわけか宇宙から離れられないのだ。

しかし、ユキの寂しそうな顔を見せられると、自分の事は棚に上げて、無性に腹がたつ。


―ああ・・・。駄目だ。

南部は頭を振って立ち上がった。
そのスラリとした背中を、丘の上の白布の像が見下ろしている。

「やっぱり、帰ろう・・・。送るよ。」

南部の諦めたような後ろ姿を、ユキは慌てて追いかけた。


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19:54  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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