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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑨

南部はあっという間にユキに追いついた。

驚いて振り返った彼女は、息せききって走ってきた友人の姿に、一瞬、目を見開いたが、すぐに笑顔になった。

「もう、南部さんったら、びっくりするじゃない。」
「ああ…、ごめん。」

南部は、少しばつが悪くて、曖昧に笑った。
ユキを一人で帰らせたくなくて咄嗟に追いかけてきたのに、ユキの笑顔に迎えられると、途端にその気持ちのやり場に困ってしまった。置き去りにしてきた3人の男たちの視線が、遠くから南部の背中に突き刺さるような気がする。

「あの、ほら・・・。その、彼奴らが・・・。」

南部はこの期に及んでも、『送るよ。』の一言が言えなくて、言い訳まじりに背後の3人の方を振り返りもせず指差した。
するとユキは、南部の指差す方をみて、クスクス笑いだした。
「まあ、みんな。何言ってるのかしら?」

面白そうに笑うユキにつられて振り返ると、その視線の先には、何かしら賑やかに叫んでいる男たちが、街の灯りに照らされて、そのシルエットだけが重なり合って揺れていた。

「いや、彼奴らがさ、ユキさんを一人で帰らせちゃまずいんじゃないか、って言うもんだから・・・。」
「まあ、そうなの!?大丈夫だって言ってるのに。」
「でも、呼び出しといて一人で帰したんじゃ、古代に怒られるよ。」


ユキは、南部の苦しい言い訳をサラリと夜風にながして微笑んでいた。
そして、向こうで騒いでいる3人に手を振った。

「じゃあ、お言葉に甘えて送っていただくわ!」

ユキは通りの向こうで揺れるシルエットに向かって大きな声で叫ぶと、南部を見上げて、またクスクス笑った。


二人は、相変わらず騒がしい気配の3人に背を向けて、再び歩き始めた。
チューブカーのステーションから、ユキは自宅のある郊外に向かうはずだ。

しかし、一つ隣のブロックの角まで来た時、彼女は不意に立ち止まると、ステーションとは逆の方向へ角を曲がった。

「・・・?」

不思議そうな顔の南部に、ユキは微笑んだ。
「ちょっと、寄りたいところがあるんだけど。」
「えっ?どこ・・・?」
南部は少々酔いのまわった頭の芯が、急に冷めるような気がした。
「ほら。あの丘の上。」
ユキに促されて見上げた先には、開発中の街のはずれの小高い丘の上に、ほのかに浮かぶ明かりが見える。
その儚げな明かりは、今まで街の明かりにかき消されて見えなかったのが、このビルの陰の暗がりまで来て、初めてぼんやりと浮かび上がってきたのだった。

暗闇の中にぽつんと浮かぶその明りは、まるで、灯台のようだった。

「あれは・・・。」
「そうよ。今はまだ建設中だけど、この前の航海で亡くなったヤマト乗組員の魂が眠る場所。」

ユキはそう言うと、先に立って歩き始めた。
南部を振り返りながら、後ろ向きのまま歩いている。

「大丈夫。ママには、今日はお友達の家に泊めてもらうから、って言ってあるから。」

そう言うユキの表情は、街の外れの暗がりにまぎれて、南部からはよく見えなかった。
しかし、少し、寂しそうに微笑んでいるような気がした。



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