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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑧

夜の風は、冷たい空気を運んでくる。
夜10時を回って、店の外に出た皆の頭上には、こぼれ落ちそうな星々が輝いていた。

地上に戻ってから数ヶ月、開発の進む都市中心部に比べれば、郊外に広がる未開発地区の方が圧倒的な面積を占めている。その、荒れ果てたまま手付かずになっている土地から吹いてくる風は、少し埃っぽい臭いがした。


「じゃあ、俺はこれで。」
真田は、ニヤリと笑うともと来た道を戻って行った。
「相変わらずだなあ。」
と、太田が苦笑混じりで見送れば、
「まあ、真田さんはああでなくっちゃ。」
と、相原も笑った。

真田は、やり残した作業があるからと言って、研究室に戻って行った。久しぶりの宴会にウーロン茶で付き合ったのも、そのためだった。
ユキは真田の後姿を見送りながら、昼間の件を思い出していた。
─防衛軍の未来の方向性にかかわるプロジェクト・・・。

ほんの少し俯いて思いを巡らすユキの表情を、島は見逃さなかった。

「ユキ?どうかした?」
「いいえ。なんでもないわ。」

ユキはそう言って笑った。
─本当に何でもなければいいのに・・・。
ユキは胸に渦巻く不安をぬぐい去ることはできなかったが、とにかくいつもの笑顔をつくることはできた。

いつの間にか、作り笑いばかりが上手になった。
昔はもっと自分の気持ちをストレートに表現したような気がする。
泣いて、笑って、怒って・・・。

ユキは、気がつくと、古代の事を考えていた。
いつも一緒だった、苦しかった日々・・・。

ユキは、満天の星空を見上げて、もう一度微笑んだ。


「そろそろ、行こうか。」
島がみんなを促して、5人は歩き始めた。

「なあ。もう一軒、寄って行かないか?」
相原の声で、みな、足を止める。
「いいけど・・・。」
そう言って太田は、ユキを見た。
ユキを誘っていいものかどうか、迷っている顔だった。
かといって、このまま一人で帰らせるのも気が引ける、といったところだろう。

ユキは、瞬時にその雰囲気を察知したようだった。
「ああ、私なら、一人で帰れるから。どうぞご遠慮なく。」
そして、じゃあ、と手をあげた。

「おい。待てよ。」
島は引きとめたが、ユキは笑顔で駈け出した。
「大丈夫よ!私、こう見えても、ヤマトの戦士なんですから!」

残された格好の男4人は、一瞬顔を見合わせた。

そして次の瞬間、一人が彼女を追いかけて走り出した。

「次の店、メールで教えて。後で行くから。」

南部の後姿はは、あっという間にみんなから遠ざかって行った。







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19:49  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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