2016.11/15(Tue)
若葉の季節 ④
その日の午後は、忙しかった。
長官が、連邦政府との懇談会に出掛けて行ってしまうと、ユキは、休む間もなく次の日の会議の資料やら、そのまた次の会議の会場の手配やら、秘書としての仕事に追われて時間を過ごした。
結局、科学局に着いたのは、予定の時間を1時間も過ぎてからだった。
「ユキ!久しぶりだな。元気だったか?」
科学局のロビーでユキを出迎えてくれたのは、真田だった。
防衛軍本部のビルと隣接するエリアにある科学局も、真新しい建物の匂いがする。白い壁に囲まれたロビーは、吹き抜けの空間が遥か上方まで繋がって、その大きな穴を廊下が取り囲んでいる。
ユキはここに来る度に、この空へ向かって伸びる空間に、吸い込まれそうになるような気がする。
「すみません。遅くなってしまって。」
「ああ、いや、良いんだ。遅くなると連絡をもらったとき、こちらもちょうど取り込み中でね。1時間遅く来てくれて、好都合だったよ。」
真田は、科学局の中にある自分の研究室にユキを案内しながら、にこやかに話を続けた。
「長官から何か預かってきてくれたんだろう?」
「はい。この封筒を。」
ゆきは、長官からの書面を真田に手渡した。
研究室では、2、3人の若い研究員が、熱心に端末を見ながら話し合っている。ユキの姿をみると、みな一様に恥ずかしそうに、会釈をした。
「ユキ、コーヒーでいいかな?」
「あっ、お構いなく。」
真田は、ユキを研究室の奥まったところにある小さな休憩室に案内した。
「お忙しそうですね。」
「まあ、ぼちぼちだな。だが、これも嬉しい慌ただしさだよ。何しろ、地球は甦ったんだからな。その復興のために尽くせるのなら、どんなに忙しくったって、寝る間を惜しんで働くさ。」
真田は、嬉しそうに胸を張った。
「しかし、ユキ。きみも大変そうだな。古代はいないし・・・。」
わかってはいても、改めて言われると、寂しさが胸に込み上げてくる。
もう慣れっこになったと思っていても、こうしてときどき、ユキの心を冷たい風がユキ抜けるのだ。
ユキは、静かに目を伏せた。
「それはそうと、ユキ。この封筒の中身を知っているのか?」
ユキが真田に渡した封筒は、長官から直接預かってきたものの、その中身については、何も知らされていなかった。
「いいえ。ただ、これからの防衛軍の方向性にかかわる事だと・・・。」
「ふうむ。」
真田は、少し考えてから、ユキにここだけの話と断って話しはじめた。
「そうだな。これは、新造艦の企画書なんだよ。ヤマトに搭載されたあらゆる機能を、もっと改良して強力にしたものを装備する予定だ。ヤマトに比べると、オートメーション化も格段に進むだろう。」
「まあ。そんな計画が・・・。」
地球は、凄まじい勢いで復興を続けている。
しかし、それに比例して、地球防衛軍の軍備も拡張の一途をたどっている。
真田は、複雑な表情を浮かべて、腕を組んだ。
その様子に、ユキの心にも、説明のつかない不安がよぎった。
長官が、連邦政府との懇談会に出掛けて行ってしまうと、ユキは、休む間もなく次の日の会議の資料やら、そのまた次の会議の会場の手配やら、秘書としての仕事に追われて時間を過ごした。
結局、科学局に着いたのは、予定の時間を1時間も過ぎてからだった。
「ユキ!久しぶりだな。元気だったか?」
科学局のロビーでユキを出迎えてくれたのは、真田だった。
防衛軍本部のビルと隣接するエリアにある科学局も、真新しい建物の匂いがする。白い壁に囲まれたロビーは、吹き抜けの空間が遥か上方まで繋がって、その大きな穴を廊下が取り囲んでいる。
ユキはここに来る度に、この空へ向かって伸びる空間に、吸い込まれそうになるような気がする。
「すみません。遅くなってしまって。」
「ああ、いや、良いんだ。遅くなると連絡をもらったとき、こちらもちょうど取り込み中でね。1時間遅く来てくれて、好都合だったよ。」
真田は、科学局の中にある自分の研究室にユキを案内しながら、にこやかに話を続けた。
「長官から何か預かってきてくれたんだろう?」
「はい。この封筒を。」
ゆきは、長官からの書面を真田に手渡した。
研究室では、2、3人の若い研究員が、熱心に端末を見ながら話し合っている。ユキの姿をみると、みな一様に恥ずかしそうに、会釈をした。
「ユキ、コーヒーでいいかな?」
「あっ、お構いなく。」
真田は、ユキを研究室の奥まったところにある小さな休憩室に案内した。
「お忙しそうですね。」
「まあ、ぼちぼちだな。だが、これも嬉しい慌ただしさだよ。何しろ、地球は甦ったんだからな。その復興のために尽くせるのなら、どんなに忙しくったって、寝る間を惜しんで働くさ。」
真田は、嬉しそうに胸を張った。
「しかし、ユキ。きみも大変そうだな。古代はいないし・・・。」
わかってはいても、改めて言われると、寂しさが胸に込み上げてくる。
もう慣れっこになったと思っていても、こうしてときどき、ユキの心を冷たい風がユキ抜けるのだ。
ユキは、静かに目を伏せた。
「それはそうと、ユキ。この封筒の中身を知っているのか?」
ユキが真田に渡した封筒は、長官から直接預かってきたものの、その中身については、何も知らされていなかった。
「いいえ。ただ、これからの防衛軍の方向性にかかわる事だと・・・。」
「ふうむ。」
真田は、少し考えてから、ユキにここだけの話と断って話しはじめた。
「そうだな。これは、新造艦の企画書なんだよ。ヤマトに搭載されたあらゆる機能を、もっと改良して強力にしたものを装備する予定だ。ヤマトに比べると、オートメーション化も格段に進むだろう。」
「まあ。そんな計画が・・・。」
地球は、凄まじい勢いで復興を続けている。
しかし、それに比例して、地球防衛軍の軍備も拡張の一途をたどっている。
真田は、複雑な表情を浮かべて、腕を組んだ。
その様子に、ユキの心にも、説明のつかない不安がよぎった。
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