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2016.11/15(Tue)

若葉の季節 ③

地球はまさに奇跡的な復興を遂げつつあった。

ヤマトがイスカンダルから持ち帰った放射能除去装置は、真田をチーフとする科学局の特別チームによって、地球の環境に合わせて改良され、量産された。その結果、全土を遊星爆弾による放射能で汚染されていた地上は、再び、人類の生活圏として復活したのである。

長い地下生活から解放された人々は、冬枯れた植物が、春の訪れとともに一斉に空を目指して芽吹くように、太陽を求めて、地上に溢れ出た。
かつて、ヤマトに託された未来への希望は、今や現実のものとして、人々に活力を与えている。その目に見えないエネルギーが、この驚異的な復興の原動力だった。

この、新しい東京の街を見下ろすように、地球防衛軍本部の新庁舎は建てられた。
まだ未完成の街の中でも、新たなシンボルとしての雰囲気を漂わせていた。

その防衛軍本部の高層階の窓から、ユキは一人、窓の外を眺めていた。

ユキは、ヤマト帰還後、防衛軍本部に配属となった。
退役して、看護婦に戻りたいという希望もあったが、イスカンダルへの航海でのユキの働きぶりは、防衛軍幹部の目に留まることとなり、防衛軍幹部の誰も、ユキを手放そうとはしなかった。
結局、ユキはそのまま軍に留まることとなり、長官の秘書に落ち着く事になったのだ。

ユキは、眩しいほどの日差しに目を細めて、水の戻った湾の輝きと、行き交う人々の小さな影をみていた。
こうして、慌ただしく毎日を送っていると、ほんの数か月前の出来事が夢の中での出来事のように思えてくる。
自分が、ヤマトに乗って、何万光年の宇宙を旅してきたとは、今考えてみると驚くほどに無謀で、信じられないことだった。

文字通り、命がけの毎日だった。
多くの仲間たちと出会い、そして別れた・・・。
その中で、ともに死線を越え、戦ってきた仲間との絆は、この先も生涯変わることはないだろうと確信できる。

それに、大切な人との出会いも・・・。

窓の外を吹き抜ける風は、ユキの心を、遥か彼方へと吹き上げた。


「ユキ。午後の予定はどうなっているかな?」

長官の低い声に引き戻されて、ユキは慌てて、手元のファイルを開いた。

「はい。13時から、連邦政府との懇談会が入っています。」

長官は、満足そうに椅子に腰をおろして窓の外を見遣った。
「地球の復興は目ざましいな。」
「はい。こうして再び、地上に戻ってこられるなんて夢のようです。」
「それもこれも、みな、君たちが頑張ってくれたおかげだよ。」
「いえ、私たちはただ、必死で・・・。

長官は、穏やかに微笑んだ。
「それはそうと、古代の事なんだが。」
ユキはハッとして、顔を上げた。
「君たち、婚約したんだって?そんなときに古代には長期の外周艦隊勤務で、申し訳ないな。」

ユキは、心の動揺を必死に押し殺して、表情を整えた。

「いえ。それも一日も早い地球の復興を願う、あの人の希望ですから。」

長官は、そうか、と言うと、古代の事については、それ以上何もいわなかった。そして、しばらく他愛のない世間話をした後、他のみんなは元気か、と訊いた。

「はい。みんなそれぞれ、忙しくしているようですわ。実は、今日、仕事が終わったら久しぶりに集まるんです。」

その言葉に、長官はまたどこか嬉しそうに微笑んだ。

ユキは、浮き立つ心のどこかに、寂しさを感じていた。
今日の仲間の中に、古代は居ない・・・。



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22:49  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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