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2016.11/15(Tue)

若葉の季節 ①

カーテンの隙間から差し込む日の光が、部屋の明度を高めていく。
窓際に配置されたベッドの上にもその光は広がって、否応なく、室内の温度も生ぬるいものに変わっていった。

部屋の主は、本当はもう少し眠っていたいという欲求を太陽に遮られる格好で、しぶしぶ、目をこすりながら上体を起こした。寝ぐせでクシャクシャの髪の毛を、少し乱暴に掻きむしって、ベッドの縁に座った。

眠たそうな眼を細めて枕元の時計を見ると、もう既に正午が近い時間になっていた。

「ああ・・・。そろそろ起きないと・・・。」    

南部は、クローゼットの中からごくありふれたシャツとジーンズを選ぶと、部屋の隅にある小さな洗面所で顔を洗い、サッと髪をとかしてどうにか外出できるだけの格好を整えた。
南部は、身支度に時間をかけない。それは、不精だとか、身に構わない性格だとか、そういった類の事ではなく、おそらく、宇宙戦士訓練学校時代からの寮生活と軍での生活が、彼の習慣に影響を与えたのだろう。
とにかく、衣食に時間をかけない事が、いつの間にか身に染み付いてしまったようだった。

階下では、人の立ち働く気配がしている。
南部は、窓を開け放ったまま部屋の扉だけ閉めると、賑やかな雰囲気の漂うリビングに下りて行った。


ヤマトがイスカンダルから帰還してから、半年余りが過ぎようとしている。
その間の地球の復興は目を見張るばかりで、あの干上がった海にも水が戻り、まだ都市部に限られてはいるが、徐々に、人々が地上に戻り始めていた。
南部家の家族も、都市計画に基づき割り当てられた区画での新しい地上生活をスタートさせていた。

帰還後、南部は他の多くの仲間と同様、身の振り方を考えなければならなかった。
とりあえずは、住むところの確保が最優先課題だ。
島、太田、相原は実家に戻った。
古代は、他に帰るべき場所もなく、防衛軍から提供された宿舎に移った。
南部は、迷った。
以前の彼なら、迷うことなく、宿舎に移ったのだろうが、航海を終えて帰った彼は以前の彼ではなかった。
イスカンダルへの航海の途中、相原が精神疲労で倒れる前に古代に叫んだという言葉も、南部の心に突き刺さっていた。

『どうせみんな死ぬんなら、俺は父さんや母さんの傍で死にたい!』

これには、古代も堪えただろうが、その事を後で聞いた南部にも相当堪える言葉だった。
相原の言うとおり、いずれみんな死ぬのだ。
それに、当面、軍に留まるという選択をした南部は、その身にいつ何どき、どんな事が起こるか分からない。
『万が一』の確率は、一般人に比べて、格段に高い。
しかも、艦隊勤務の南部は、その任務の合間の僅かな期間しか地球に滞在できないのが現状だった。

結局、南部は、迷った挙句、家族の元に戻る事にしたのだった。


こうして、少し懐かしいような、気恥ずかしいような、ぎこちない同居生活が始まった。



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22:44  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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