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2016.11/15(Tue)

若葉の季節 ①

カーテンの隙間から差し込む日の光が、部屋の明度を高めていく。
窓際に配置されたベッドの上にもその光は広がって、否応なく、室内の温度も生ぬるいものに変わっていった。

部屋の主は、本当はもう少し眠っていたいという欲求を太陽に遮られる格好で、しぶしぶ、目をこすりながら上体を起こした。寝ぐせでクシャクシャの髪の毛を、少し乱暴に掻きむしって、ベッドの縁に座った。

眠たそうな眼を細めて枕元の時計を見ると、もう既に正午が近い時間になっていた。

「ああ・・・。そろそろ起きないと・・・。」    

南部は、クローゼットの中からごくありふれたシャツとジーンズを選ぶと、部屋の隅にある小さな洗面所で顔を洗い、サッと髪をとかしてどうにか外出できるだけの格好を整えた。
南部は、身支度に時間をかけない。それは、不精だとか、身に構わない性格だとか、そういった類の事ではなく、おそらく、宇宙戦士訓練学校時代からの寮生活と軍での生活が、彼の習慣に影響を与えたのだろう。
とにかく、衣食に時間をかけない事が、いつの間にか身に染み付いてしまったようだった。

階下では、人の立ち働く気配がしている。
南部は、窓を開け放ったまま部屋の扉だけ閉めると、賑やかな雰囲気の漂うリビングに下りて行った。


ヤマトがイスカンダルから帰還してから、半年余りが過ぎようとしている。
その間の地球の復興は目を見張るばかりで、あの干上がった海にも水が戻り、まだ都市部に限られてはいるが、徐々に、人々が地上に戻り始めていた。
南部家の家族も、都市計画に基づき割り当てられた区画での新しい地上生活をスタートさせていた。

帰還後、南部は他の多くの仲間と同様、身の振り方を考えなければならなかった。
とりあえずは、住むところの確保が最優先課題だ。
島、太田、相原は実家に戻った。
古代は、他に帰るべき場所もなく、防衛軍から提供された宿舎に移った。
南部は、迷った。
以前の彼なら、迷うことなく、宿舎に移ったのだろうが、航海を終えて帰った彼は以前の彼ではなかった。
イスカンダルへの航海の途中、相原が精神疲労で倒れる前に古代に叫んだという言葉も、南部の心に突き刺さっていた。

『どうせみんな死ぬんなら、俺は父さんや母さんの傍で死にたい!』

これには、古代も堪えただろうが、その事を後で聞いた南部にも相当堪える言葉だった。
相原の言うとおり、いずれみんな死ぬのだ。
それに、当面、軍に留まるという選択をした南部は、その身にいつ何どき、どんな事が起こるか分からない。
『万が一』の確率は、一般人に比べて、格段に高い。
しかも、艦隊勤務の南部は、その任務の合間の僅かな期間しか地球に滞在できないのが現状だった。

結局、南部は、迷った挙句、家族の元に戻る事にしたのだった。


こうして、少し懐かしいような、気恥ずかしいような、ぎこちない同居生活が始まった。



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22:44  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/15(Tue)

若葉の季節 ②

「おはよう。」

南部は、まだ腫れぼったい瞼をしょぼしょぼさせながらリビングに入ってきた。
日が高く上ってからの挨拶にしては、少し間が抜けていたが、起き抜けに顔を合わせた母親に対して、それ以外の言葉を思い付かなかった。

「随分、ごゆっくりね。」

母親は、息子を見上げて微笑んだ。初夏の日の光が差し込む窓辺で、膝の上に小さな端末を開いて、何かしら、目を通しているようだった。

南向きのリビングには、開け放たれた大きな窓から、爽やかな風がそよぎこんでいる。
東京郊外の高台に建つ真新しい屋敷は、南向きの一番明るい場所に、開放的なリビングを配置した、洋風の家だった。

皆が、太陽を渇望していた。

「もう、お昼ね。」

母親は端末の画面を閉じると、台所に向かった。リビングとひとつづきの台所では、既にコーヒーの芳ばしい香りが立ち上っている。この屋敷の者は全員、南部が起き抜けにコーヒーを一杯飲みたがることを知っていた。


ダイニングのテーブルについた南部は、にこやかにコーヒーを運んでくる母親の長い髪が、部屋中を満たす初夏の風に揺れるのを、何気なく見ていた。
こんな、穏やかな日々が再び自分の元に訪れるなんて、一年前には想像もつかなかった。

熱いコーヒーにミルクが円を描いて溶けていく様子を眺めながら、南部は、その身体から心だけが遊離していくような感覚に陥った。
ぐるぐると回りながら、自分の気持ちは次第に、この安らぎから引き離されていく…。

南部は、カップの中身を一気に混ぜて、透明感を無くしたコーヒーを飲んだ。

「いい香りだね。どこで買ったの?」


南部は、微笑む母の匂いの中で、記憶の中に残る、ユキの洗い髪の匂いを探していた。


22:45  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/15(Tue)

若葉の季節 ③

地球はまさに奇跡的な復興を遂げつつあった。

ヤマトがイスカンダルから持ち帰った放射能除去装置は、真田をチーフとする科学局の特別チームによって、地球の環境に合わせて改良され、量産された。その結果、全土を遊星爆弾による放射能で汚染されていた地上は、再び、人類の生活圏として復活したのである。

長い地下生活から解放された人々は、冬枯れた植物が、春の訪れとともに一斉に空を目指して芽吹くように、太陽を求めて、地上に溢れ出た。
かつて、ヤマトに託された未来への希望は、今や現実のものとして、人々に活力を与えている。その目に見えないエネルギーが、この驚異的な復興の原動力だった。

この、新しい東京の街を見下ろすように、地球防衛軍本部の新庁舎は建てられた。
まだ未完成の街の中でも、新たなシンボルとしての雰囲気を漂わせていた。

その防衛軍本部の高層階の窓から、ユキは一人、窓の外を眺めていた。

ユキは、ヤマト帰還後、防衛軍本部に配属となった。
退役して、看護婦に戻りたいという希望もあったが、イスカンダルへの航海でのユキの働きぶりは、防衛軍幹部の目に留まることとなり、防衛軍幹部の誰も、ユキを手放そうとはしなかった。
結局、ユキはそのまま軍に留まることとなり、長官の秘書に落ち着く事になったのだ。

ユキは、眩しいほどの日差しに目を細めて、水の戻った湾の輝きと、行き交う人々の小さな影をみていた。
こうして、慌ただしく毎日を送っていると、ほんの数か月前の出来事が夢の中での出来事のように思えてくる。
自分が、ヤマトに乗って、何万光年の宇宙を旅してきたとは、今考えてみると驚くほどに無謀で、信じられないことだった。

文字通り、命がけの毎日だった。
多くの仲間たちと出会い、そして別れた・・・。
その中で、ともに死線を越え、戦ってきた仲間との絆は、この先も生涯変わることはないだろうと確信できる。

それに、大切な人との出会いも・・・。

窓の外を吹き抜ける風は、ユキの心を、遥か彼方へと吹き上げた。


「ユキ。午後の予定はどうなっているかな?」

長官の低い声に引き戻されて、ユキは慌てて、手元のファイルを開いた。

「はい。13時から、連邦政府との懇談会が入っています。」

長官は、満足そうに椅子に腰をおろして窓の外を見遣った。
「地球の復興は目ざましいな。」
「はい。こうして再び、地上に戻ってこられるなんて夢のようです。」
「それもこれも、みな、君たちが頑張ってくれたおかげだよ。」
「いえ、私たちはただ、必死で・・・。

長官は、穏やかに微笑んだ。
「それはそうと、古代の事なんだが。」
ユキはハッとして、顔を上げた。
「君たち、婚約したんだって?そんなときに古代には長期の外周艦隊勤務で、申し訳ないな。」

ユキは、心の動揺を必死に押し殺して、表情を整えた。

「いえ。それも一日も早い地球の復興を願う、あの人の希望ですから。」

長官は、そうか、と言うと、古代の事については、それ以上何もいわなかった。そして、しばらく他愛のない世間話をした後、他のみんなは元気か、と訊いた。

「はい。みんなそれぞれ、忙しくしているようですわ。実は、今日、仕事が終わったら久しぶりに集まるんです。」

その言葉に、長官はまたどこか嬉しそうに微笑んだ。

ユキは、浮き立つ心のどこかに、寂しさを感じていた。
今日の仲間の中に、古代は居ない・・・。



22:49  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/15(Tue)

若葉の季節 ④

その日の午後は、忙しかった。

長官が、連邦政府との懇談会に出掛けて行ってしまうと、ユキは、休む間もなく次の日の会議の資料やら、そのまた次の会議の会場の手配やら、秘書としての仕事に追われて時間を過ごした。

結局、科学局に着いたのは、予定の時間を1時間も過ぎてからだった。

「ユキ!久しぶりだな。元気だったか?」

科学局のロビーでユキを出迎えてくれたのは、真田だった。
防衛軍本部のビルと隣接するエリアにある科学局も、真新しい建物の匂いがする。白い壁に囲まれたロビーは、吹き抜けの空間が遥か上方まで繋がって、その大きな穴を廊下が取り囲んでいる。

ユキはここに来る度に、この空へ向かって伸びる空間に、吸い込まれそうになるような気がする。

「すみません。遅くなってしまって。」
「ああ、いや、良いんだ。遅くなると連絡をもらったとき、こちらもちょうど取り込み中でね。1時間遅く来てくれて、好都合だったよ。」
真田は、科学局の中にある自分の研究室にユキを案内しながら、にこやかに話を続けた。
「長官から何か預かってきてくれたんだろう?」
「はい。この封筒を。」
ゆきは、長官からの書面を真田に手渡した。

研究室では、2、3人の若い研究員が、熱心に端末を見ながら話し合っている。ユキの姿をみると、みな一様に恥ずかしそうに、会釈をした。

「ユキ、コーヒーでいいかな?」
「あっ、お構いなく。」

真田は、ユキを研究室の奥まったところにある小さな休憩室に案内した。

「お忙しそうですね。」
「まあ、ぼちぼちだな。だが、これも嬉しい慌ただしさだよ。何しろ、地球は甦ったんだからな。その復興のために尽くせるのなら、どんなに忙しくったって、寝る間を惜しんで働くさ。」

真田は、嬉しそうに胸を張った。

「しかし、ユキ。きみも大変そうだな。古代はいないし・・・。」

わかってはいても、改めて言われると、寂しさが胸に込み上げてくる。
もう慣れっこになったと思っていても、こうしてときどき、ユキの心を冷たい風がユキ抜けるのだ。
ユキは、静かに目を伏せた。

「それはそうと、ユキ。この封筒の中身を知っているのか?」

ユキが真田に渡した封筒は、長官から直接預かってきたものの、その中身については、何も知らされていなかった。

「いいえ。ただ、これからの防衛軍の方向性にかかわる事だと・・・。」
「ふうむ。」

真田は、少し考えてから、ユキにここだけの話と断って話しはじめた。

「そうだな。これは、新造艦の企画書なんだよ。ヤマトに搭載されたあらゆる機能を、もっと改良して強力にしたものを装備する予定だ。ヤマトに比べると、オートメーション化も格段に進むだろう。」

「まあ。そんな計画が・・・。」

地球は、凄まじい勢いで復興を続けている。
しかし、それに比例して、地球防衛軍の軍備も拡張の一途をたどっている。

真田は、複雑な表情を浮かべて、腕を組んだ。
その様子に、ユキの心にも、説明のつかない不安がよぎった。

23:25  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/15(Tue)

若葉の季節 ⑤

昼下がりの東京の街は、汗ばむ程の陽気だった。街路樹の青葉の隙間から洩れる日差しが目にまぶしい。

碁盤の目のように整然と並んだ区画は、一つ一つのブロックごとに、名前や番号ががつけられている。
そのあちらこちらで、ビル建設のための重機が動いていた。

南部は、待ち合わせの時間には早かったが、早々に家を出てきた。
両親との関係は、今のところ良好だが、何となく居心地が悪い。母の穏やかな笑顔を見るのは悪くないが、それを心のどこかで負担に感じる自分もいた。

しかし、父親との冷めきっていた関係には、変化の兆しが見え始めていた。

『そのコーヒー、お父さんのお土産なのよ。康雄はコーヒーが好きだろう、って。』
『へえ…。そうなんだ…。』

母の言葉には、夫と息子の間を取り持ちたい気配が漂っていた。、
しかし、息子は、まだわだかまりを捨てられずにいる。
たった一言『ありがとう』と言えさえすれば、もっと楽になれるだろうに…。


―やっぱり、何か食べてくれば良かったかな…。

南部は、コーヒーを一杯飲んだだけで、出掛けたことを、少し後悔した。

―腹、減ったなあ…。

外の空気が吸いたくて、エアカーにも乗らず、一人で歩いているわけだが、朝から何も食べていない胃袋は、辛抱も限界を越えて、キリキリとした痛みをもって空腹を訴えていた。

しかし、何かを食べるには、中途半端な時間だし、一旦、何かを口にすると、際限なく食べてしまいそうな気もする。
結局、南部は空腹に身をよじる胃袋の訴えを無視して、歩き続けた。

街は熱気を帯びて、繁る若葉の青は、むせ返る匂いを放っている。
自分たちは、この太陽の匂いを体いっぱいに吸い込むために、命をかけたのだ。
ともに戦い、別れた、多くの仲間たち・・・。

南部は、青空を見上げた。

―俺たち、やっと取り戻したんだな…。


久しぶりに会う仲間たちの笑顔を思い浮かべ、防衛軍本部ビルへ向かう南部の足取りは軽い。
北上の実家へ、引っ越しの手伝いのために帰省していた相原が、もうすぐ東京に戻って来る筈だ。島と太田は、今朝、予定通り火星から帰還したとメールが入っていた。
ユキと真田も来る。

―来られないのは、古代だけか…。

南部は、古代が太陽系外周の哨戒任務に就いた日のユキの寂しそうな笑顔を、思い出していた。



23:26  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/15(Tue)

若葉の季節 ⑥

南部が防衛軍本部ビルの前に着いたのは、約束の時間の1時間も前だった。

自宅からここまではかなりの距離があったが、自分たちが取り戻した地上の世界を堪能しながら歩く道のりなら、何時間かかっても決して苦にはならないから不思議だ。
それだけの体力が彼にはあるし、また、その体力をもて余してもいる。

今回の休暇は2週間。次の任務まではあと数日、休暇が残っていた。
その殆どを、自宅周辺の散策や買い物、友人たちとの飲み会に費やしていた南部は、すっかり鈍った体をもて余しているのだった。

南部は、本部ビルの正面、道を挟んだところにある小さな店でコーヒーとペカンナッツバーを買い、道沿いの公園の木陰に腰を下ろした。
防衛軍本部ビルの周辺は、緑化事業に伴い、公園としてきれいに整備されている。昼時には、防衛軍の関係者のほかにも、周辺の会社員や工事関係者などで賑わっているのだが、日が傾き、風が冷んやりとし始めるこの時間には、人影も疎らだった。


「よう!」

不意に聞き慣れた声が響いて、南部は、飲みかけのコーヒーを口につけたまま振り返った。
艦隊勤務を示す青い制服に身を包んだ男が2人、近づいてきた。

「久しぶり!」

そう言って手をあげたのは、島だった。
隣には、随分早いじゃないか、と言って笑う太田もいる。

「久しぶりだな。」
南部も笑顔で応じると、立ち上がって手を差し出した。
代わる代わる握手をして、3か月ぶりの再開を喜びあった。

「帰還の報告か?」
南部の問いに、島はは笑顔で頷いた。
「ああ。宇宙港から直接、防衛軍本部に報告に来たんだ。約束の時間には少し早いから、太田と喫茶店にでも入って時間をつぶそうか、って話してたら、誰かさんの後姿が見えたもんでね。」
少し、悪戯っぽく笑う島の顔に、南部も嬉しくなった。

「こんないい天気の日に、外に出ない手はないだろう?」
そして、軽くウインクして見せた。
「それで、こんなに早くから、一人でぼんやりしてたってわけ。」


「久しぶりの地球は、一段と復興が進んでるね。」
と感心しきりの太田に、南部も頷く。
「そうだな。俺も帰ってくるたびに、街が広がっていくスピードに驚いてるよ。」

そうして、しばらくの間、再開した仲間たちは近況を語り合った。


「ところで、南部。」
島は、それまでとは打って変わって、少し低い声で訊いた。
「古代とユキが婚約したって、本当か?」
太田も、興味津々の顔で南部の答えを待っている。

「えっ?もう、ひと月以上も前の話だぞ。」
南部の言葉に、なんで知らないの、というニュアンスを感じ取って、島は口をとがらせた。
「俺達、ここ3か月、輸送船団で太陽系をうろうろしてたんだぞ。そんな話、知るわけないだろ!」

─知ってるんじゃないか!
南部は心の中で、こっそり苦笑した。

しかし、島は、相変らずむっとしている。
「だいたい、なんで親友の俺に一番に、直接報告しないんだ。」

とうとう南部は、吹き出してしまった。
「じゃ、誰から聞いたんだよ。」

それに答えたのは、太田だった。
「本部勤務の、通信技官だよ。」
その声にも、微かに笑いが含まれている。

─相原か・・・。

「ふうん。あいつ、みんなにメール飛ばしたんだな。」

そして、南部は、古代の恥ずかしそうな顔を思い浮かべた。古代の事だから、ユキと婚約したなんて照れくさくて、自分からは言い出せなかったんだろう。
ましてや、その相手が島なら、なおさらだ。

「まあ、古代らしいじゃないか。」
南部は、納得がいかない島をなだめながら、ふふッと笑った。

─もし島が、今日、ユキの寂しそうな顔を見てしまったら・・・。

南部は一人、ほんの少し、胸が痛んだ。それは島を思っての事か、ユキを思っての事か、南部自身にも判別はつかない。

街は次第に明度を落とし、空気が冷えていく。
待ちあわせの時間が近づいていた。

23:27  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/15(Tue)

若葉の季節 ⑦

防衛軍本部ビルの近くの新しい居酒屋で、懐かしい仲間たちは、久しぶりに顔を揃えた。
島、太田、南部にユキと真田。北上からの高速鉄道が遅れ、待ち合わせの時間に間に合わなかった相原は、途中から合流した。
しかし、彼を待ち構えていたのは、すっかり出来上がった友人たちだった。

「で?久しぶりの故郷はどうだった?」
と島が問えば、
「昔の彼女と再会したとか?」
と、傍から太田が茶々を入れる。
相原は火消しに躍起になっている。しかし、彼が実家の引っ越しで手一杯だったと力説すればするほど、皆面白がって騒ぐのだった。

週末の店は、よく客が入っていた。
店の立地から、客は軍の関係者が多いような気もしたが、年齢層は幅広い。
こざっぱりした店内には、洒落た間接照明のほのかな明かりが、ぽつぽつと灯っている。

みんな、久しぶりの再会を喜んで、よく笑い、よく飲んだ。


「それにしても、地球の復興の速度は凄いですね。」
太田は、今朝帰還してから、何度となく口にしたフレーズを真田に投げかけた。
「そうだな。」
真田は、酒飲みの集団にウーロン茶で付き合っていた。
「それは、地球人類が、長い地下生活を強いられながらも、希望を捨てなかった証だよ。」

真田の言うとおり、地上が本来の姿をこんなに早くに取り戻したのは、何もイスカンダルからもたらされた、放射能除去装置のお陰ばかりではない。
人々は、再び、地上で生活する日に備えて、出来うる限りの『種の保存』に勤めていた。
ありとあらゆる動植物DNAがレベルで保存されていたのだ。
こんなに早い時期に、街に街路樹が植樹され、空に鳥が舞っているのも、いわゆる方舟計画が功を奏したものと言えるだろう。


すると、テーブルをはさんで真田の向いに座っていた相原が、ポツリとつぶやいた。

「でも、俺は、なんだか少し違和感も感じているんです。」

遅れてきた相原はは、すっかり出来あがったみんなに追いつこうと、少々、ペースを速めて飲んでいたらしい。
案外、アルコールには強い筈の彼が、いつの間にか、赤い顔をしていた。

「実家の引っ越しを手伝いながら、その合間に、母さんとも話したんだけど・・・。」
相原の横顔は、薄暗い居酒屋の照明に照らされている。
「なんだか、俺、世の中の変化のスピードについていけてないような気がしてて。」

「と、言うと?」
真田は、他のみんなの顔を見渡しながら、相原に訊いた。
「何か、この新しい街に、しっくりこないところでもあるのか?」

「いえ、そういうわけじゃないんですが。」
相原は、口ごもった。
言いたくない、というよりは、うまく言えない、と言った感じだろうか。

すると、そのやり取りを聞いていた南部が、呟いた。
「俺も、何となくわかりますよ。」
そして、南部は、泡の消えたビールを一気に飲み干した。
「俺たちの、あの航海が、今やすっかり過去のものになってしまっているような気がするんです。こうして、生まれ変わっていく街並みを見るのは、嬉しいし、誇らしくもありますがね。でも、このきれいな街の中にいると、ガミラスとの凄惨な戦いが、まるで夢の中の出来事のように思えてくるんです・・・。」

真田は、そうか、とだけ言った。
そして、みんな、それぞれ小さくため息をついた。

「俺が地球を離れている間に、父さんが死んで、母さんは一人で俺の帰りを待っていてくれた。その、痛みはどんなに美しい地球が甦ったとしても、決して無くならないんですよ。でも・・・。」

みんな、静かに相原の言葉を待っている。
少し、アルコールで上気した頭に、彼の悲しみが浸み込んでくるようだった。

「この地球を救ったのは、間違いなく俺たちなんだっていう自負はあるんです。でも、そのために、多くの人が死にました。その事を、この街にいると、忘れてしまいそうになるんです。」

「忘れたいのさ、みんな。」
くちを開いたのは、それまで黙っていた島だった。
「忘れたいのさ。きれいさっぱり忘れてしまいたいのさ。俺だってそうさ。お前だってそうだろう?でも、忘れられない。俺は、今でもときどき、夢に見るよ。いやな夢だよ・・・。」

島の言うとおり、みんな忘れたくても忘れられない思いを背負っている。
それなのに、自分たちの周りだけが、どんどん変わっていく。
まるで何ごとも無かったかのように・・・。


一瞬の沈黙ののち、ユキはパッと顔を上げて、努めて明るい声を出した。
この嫌な空気を払しょくしたかった。

「ねえ、みんな。今日は何のために集まったと思ってるの!?」
そして、少し恥ずかしそうに、あるいは、悪戯っぽく微笑んでいる。
「『私たち』の婚約をお祝いしてくれるって言ったじゃない。」


この急激な復興に一番違和感を感じているだろう、あの男は、今ごろどのあたりを飛んでいるのだろうか。

ユキの一言で、みんなの気持ちは、宇宙のかなたの一人の男に集まっていた。


23:28  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑧

夜の風は、冷たい空気を運んでくる。
夜10時を回って、店の外に出た皆の頭上には、こぼれ落ちそうな星々が輝いていた。

地上に戻ってから数ヶ月、開発の進む都市中心部に比べれば、郊外に広がる未開発地区の方が圧倒的な面積を占めている。その、荒れ果てたまま手付かずになっている土地から吹いてくる風は、少し埃っぽい臭いがした。


「じゃあ、俺はこれで。」
真田は、ニヤリと笑うともと来た道を戻って行った。
「相変わらずだなあ。」
と、太田が苦笑混じりで見送れば、
「まあ、真田さんはああでなくっちゃ。」
と、相原も笑った。

真田は、やり残した作業があるからと言って、研究室に戻って行った。久しぶりの宴会にウーロン茶で付き合ったのも、そのためだった。
ユキは真田の後姿を見送りながら、昼間の件を思い出していた。
─防衛軍の未来の方向性にかかわるプロジェクト・・・。

ほんの少し俯いて思いを巡らすユキの表情を、島は見逃さなかった。

「ユキ?どうかした?」
「いいえ。なんでもないわ。」

ユキはそう言って笑った。
─本当に何でもなければいいのに・・・。
ユキは胸に渦巻く不安をぬぐい去ることはできなかったが、とにかくいつもの笑顔をつくることはできた。

いつの間にか、作り笑いばかりが上手になった。
昔はもっと自分の気持ちをストレートに表現したような気がする。
泣いて、笑って、怒って・・・。

ユキは、気がつくと、古代の事を考えていた。
いつも一緒だった、苦しかった日々・・・。

ユキは、満天の星空を見上げて、もう一度微笑んだ。


「そろそろ、行こうか。」
島がみんなを促して、5人は歩き始めた。

「なあ。もう一軒、寄って行かないか?」
相原の声で、みな、足を止める。
「いいけど・・・。」
そう言って太田は、ユキを見た。
ユキを誘っていいものかどうか、迷っている顔だった。
かといって、このまま一人で帰らせるのも気が引ける、といったところだろう。

ユキは、瞬時にその雰囲気を察知したようだった。
「ああ、私なら、一人で帰れるから。どうぞご遠慮なく。」
そして、じゃあ、と手をあげた。

「おい。待てよ。」
島は引きとめたが、ユキは笑顔で駈け出した。
「大丈夫よ!私、こう見えても、ヤマトの戦士なんですから!」

残された格好の男4人は、一瞬顔を見合わせた。

そして次の瞬間、一人が彼女を追いかけて走り出した。

「次の店、メールで教えて。後で行くから。」

南部の後姿はは、あっという間にみんなから遠ざかって行った。







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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑨

南部はあっという間にユキに追いついた。

驚いて振り返った彼女は、息せききって走ってきた友人の姿に、一瞬、目を見開いたが、すぐに笑顔になった。

「もう、南部さんったら、びっくりするじゃない。」
「ああ…、ごめん。」

南部は、少しばつが悪くて、曖昧に笑った。
ユキを一人で帰らせたくなくて咄嗟に追いかけてきたのに、ユキの笑顔に迎えられると、途端にその気持ちのやり場に困ってしまった。置き去りにしてきた3人の男たちの視線が、遠くから南部の背中に突き刺さるような気がする。

「あの、ほら・・・。その、彼奴らが・・・。」

南部はこの期に及んでも、『送るよ。』の一言が言えなくて、言い訳まじりに背後の3人の方を振り返りもせず指差した。
するとユキは、南部の指差す方をみて、クスクス笑いだした。
「まあ、みんな。何言ってるのかしら?」

面白そうに笑うユキにつられて振り返ると、その視線の先には、何かしら賑やかに叫んでいる男たちが、街の灯りに照らされて、そのシルエットだけが重なり合って揺れていた。

「いや、彼奴らがさ、ユキさんを一人で帰らせちゃまずいんじゃないか、って言うもんだから・・・。」
「まあ、そうなの!?大丈夫だって言ってるのに。」
「でも、呼び出しといて一人で帰したんじゃ、古代に怒られるよ。」


ユキは、南部の苦しい言い訳をサラリと夜風にながして微笑んでいた。
そして、向こうで騒いでいる3人に手を振った。

「じゃあ、お言葉に甘えて送っていただくわ!」

ユキは通りの向こうで揺れるシルエットに向かって大きな声で叫ぶと、南部を見上げて、またクスクス笑った。


二人は、相変わらず騒がしい気配の3人に背を向けて、再び歩き始めた。
チューブカーのステーションから、ユキは自宅のある郊外に向かうはずだ。

しかし、一つ隣のブロックの角まで来た時、彼女は不意に立ち止まると、ステーションとは逆の方向へ角を曲がった。

「・・・?」

不思議そうな顔の南部に、ユキは微笑んだ。
「ちょっと、寄りたいところがあるんだけど。」
「えっ?どこ・・・?」
南部は少々酔いのまわった頭の芯が、急に冷めるような気がした。
「ほら。あの丘の上。」
ユキに促されて見上げた先には、開発中の街のはずれの小高い丘の上に、ほのかに浮かぶ明かりが見える。
その儚げな明かりは、今まで街の明かりにかき消されて見えなかったのが、このビルの陰の暗がりまで来て、初めてぼんやりと浮かび上がってきたのだった。

暗闇の中にぽつんと浮かぶその明りは、まるで、灯台のようだった。

「あれは・・・。」
「そうよ。今はまだ建設中だけど、この前の航海で亡くなったヤマト乗組員の魂が眠る場所。」

ユキはそう言うと、先に立って歩き始めた。
南部を振り返りながら、後ろ向きのまま歩いている。

「大丈夫。ママには、今日はお友達の家に泊めてもらうから、って言ってあるから。」

そう言うユキの表情は、街の外れの暗がりにまぎれて、南部からはよく見えなかった。
しかし、少し、寂しそうに微笑んでいるような気がした。



19:50  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑩

ユキは、相変わらず南部の半歩前を歩いていた。

皆と別れてから、どのくらいの時間をこうして歩いているのだろうか。
黙って彼女の後を歩く南部の頬は、夜風に晒されて冷えきっていた。

「ねえ、ユキさん・・・。」

南部は、遠慮がちに声をかけた。

いつの頃からか、南部はユキのことを『ユキさん』と呼ぶようになっていた。
いつまでも『森さん』と呼ぶのは、あんまり他人行儀だ。かといって島や真田のように『ユキ』と呼ぶのはなんとなく気後れがする。そういうわけで、間をとって『ユキさん』に落ち着いたのだった。
相原や太田も『ユキさん』と呼んでいるが、彼らも恐らく同じような事を考えているのだろう。


この事には、古代との関係の微妙な変化も、影響していた。
友人であり、同僚であり、かけがえのない仲間である彼は、同時に、自分たちににとっては上官でもあるからだ。

もちろん、ヤマトに乗った時から彼は既に上官だったわけだが、あの頃はみな幼くて、今にして思えば学生気分が抜けていないものだから、その辺りの線引きは曖昧だった。

しかし、今は違う。
今や古代は、完全に上官なのである。そして、ユキはその古代の婚約者だ。

どちらにしても、『ユキ』と自然に呼べるほど、彼女との関係が親密だという自信も無かった。

―自分とユキとの間には決して越えられない一線がある・・・。

南部は、無意識のうちに、自分の気持ちにロックをかけているのかもしれなかった。
それは、単に古代に対する遠慮というわけでもないのだ。



「なあに?南部さん?」

振り返った彼女は、南部の心の内も知らず、無邪気な笑顔を向けてくる。

「いや、歩くと、結構遠い気がするね。」
「そうね。向こうから見たときは、すぐそこにあるような気がしたけど、案外遠いのね。」

ユキはそう言いながら、白いカーデガンの襟元を直した。

「寒いの?」
「ううん。大丈夫。」

彼女の華奢な肩のラインが月明かりに照らし出されて、暗がりに浮かぶ白いカーデガンが、かえって寒そうな印象を与えた。

「でもさ・・・。」
南部はユキと並んで歩き始めた。
街の外れの通りは、人通りもなく、ただ街灯の明かりだけが道標のようにポツポツと一本道を照らしている。
「今日、本当に、友達の家に泊めてもらうって言って出てきたの?」

「さあ、どうかしら。」

ユキは、歩きながら南部を横目でチラリと見上げた。
そして、すぐに、観念しました、とでも言うように肩をすくめた。

「皆と別れてすぐに、ママに電話したの。だって、みんな、きっと一晩中、飲み明かすつもりなんでしょ。なんだか、羨ましくって。」
そして、前を向いて目を伏せた。
「そしたら急に帰りたくなくなっちゃって。ママに嘘ついちゃった・・・。」

ユキは、小さなため息をついた。

「仕方ないから、今晩泊めてくれるお友達でも探そうかと思ってた所に、南部さんが来てくれたから・・・。つい、英雄の丘に行きたいなんてわがまま言っちゃった。」

ユキは、ごめんなさい、と舌をだした。
その少女のような仕草とは裏腹に、彼女の表情には陰がさしている。

いつの間に、こんな憂いた顔をするようになったのか・・・。


南部は、野暮な質問をしたことを悔やんだ。


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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑪

英雄の丘から見下ろす街の灯りが、湾の形に弧を描いて白く輝いている。
ようやく着いた丘の上から見下ろす東京の街は、冷たい夜風にキラキラと揺れて美しかった。
復興途上にある街の周囲には、まだその何倍、何十倍もの面積の未開発地区を残している。しかし、視界の中央で輝く街の光は、その周囲に広がる暗闇の中に呑み込まれることなく、輝きを保っていた。

それはまさに、人類の希望の象徴だった。


ユキは少し上気した顔で、その光の集まりを見つめていた。
南部も、彼女と並んで立っている。

「東京の夜景なんて、今まで見ることも無かったわ。」
「そうだね。」

ユキの言うとおり、地下に閉じ込められていた生活の中では、東京に限らず、夜景を眺めるなんて事はありえなかった。地下都市にも朝と夜はあったが、貴重な燃料を節約するために、夜間の電力供給は、ごく限られたものだった。それよりも、昼間の明るさを確保するのが重要だったのだ。

暗い夜の向こう側から、ほのかに薫るのは、丘の上の公園を囲むように再生された森の木々の匂いだろうか。
それとも、海の上を渡ってくる、風の香りなのだろうか。

南部は、大きく深呼吸をした。
「何の匂いだろう?」
するとユキは、ちょっと考えてから答えた。
「若葉の香りじゃない?」

そして風は、ユキの長い髪を揺らした。
その、風に乱れた髪をさりげなく右手でたくしあげた時、彼女の白い胸元に、何か光るものが見えた。

「それ・・・。」

南部の視線にユキも気付いたようだった。

「ああ。これ・・・。」
そして、ブラウスの中から、小さな光の元を引っ張りだして見せた。
「かわいいでしょ。」

それは、銀色に光る小さなペンダントだった。
暗がりではっきりとは見えないが、星の形をしているように見えた。

ユキが何を言わなくても、それを見れば、そのペンダントがどういう類のものかは、すぐにわかった。

「それ、もしかして古代から?」

ユキは、それには何も答えず、ただ、にっこりと微笑んだ。

「あいつもバカだなあ。いくら、外周艦隊所属だからって、ユキさんを何ヵ月も放ったらかしにするような事するなんてさ。あいつが望めば、地上勤務だって可能なのに。」

それでも、ユキはただ微笑むだけだった。


南部は、その笑顔が息苦しくて、彼女から目をそらすと、建設中の丘の真ん中を振り返った。
イスカンダルへの航海で命を落とした乗組員の慰霊碑が作られているとは聞いていた。
ほとんど完成しているようだが、中央の銅像らしき大きな塊には、まだ白い布が巻き付けられていた。

南部は吸い寄せられるように、その台座に歩み寄った。
ユキも、つられるようについてくる。

若葉の香りに混ざって、微かに甘い香りがした。

19:52  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑫

「本当に、帰らなくていいの?」

気がつけば、月が西に傾きかけている。右肩の欠けた月は、まるで覗き込むように二人の横顔を照らしていた。

「帰りたくても、もう、エアカーも走ってないわ。」
「明日、仕事じゃないの?」
「お休みいただいてるの。」

ユキは、南部を見上げて笑った。
彼女の意外な用意周到さに、南部も苦笑した。

白布にくるまれた銅像の台座の前で、二人は地べたに並んで腰をおろして、夜風にそよぐ木々のざわめきに身をまかせていた。

「南部さんこそ、良かったの?」
「俺の親は、慣れっこだよ。だいたい、家を飛び出したっきり、何年も帰らなかったような放蕩息子だからね。今さら、一晩帰らなかったくらい、どうってことないさ。」

南部は、少し投げやりに笑ってみせた。

本当は、ユキを送り届けたら、みんなと合流する前に家に電話を入れるつもりだった。しかし、行き掛かり上、電話をするタイミングを失ってしまったのだ。
無断で外泊することに、後ろめたさが無いわけではなかったが、ユキの前で、自宅に連絡するのは何となく気がひけた。
それを、見栄と言うのかもしれない。


しかし、ユキは、予想に反して、困ったような顔をした。

「あの、そうじゃなくって・・・。」
「・・・?」
「私が言ってるのは、島くん達の方よ。」

―ああ…。
そうだ。ユキを送り届けたら、後で合流すると言って別れたんだった。
─あいつら、怒ってるかな・・・。
南部は曖昧に笑うしかなかった。

「私ね、最近、ここに良く来るのよ。」
「へえ、そうなの?」
「私も、さっき、相原君が言ってた事、何となくわかるような気がするの。」

ユキはそう言って、空を仰いだ。

「この半年余りの間に、世界はすっかり変わってしまったわ。」
「そうだね。」
南部も、複雑な表情を見せた。
自分たちを取り巻く環境の激変に戸惑っているのは、南部も同じだ。

「でも、俺たちの望んだとおり、地球はギリギリのところで救われたんだ。」
「ええ、そうよ。スターシアさんが言ったように、私たちは、自分たちの力で明日の幸せを勝ち取ったの。」

でも・・・、とユキは口ごもった。

「今、地球は甦ろうとしている。それなのに私の心は、あの戦いの日々にとらわれ続けている・・・。」

南部は、俺も・・・、と言いかけて止めた。
この心の葛藤は、とても言葉には言い表せない。言葉にしてしまうと、とたんに安っぽくなってしまうような気がした。

「私には、戦いの記憶しかないの。嬉しい事も悲しい事も、全部その中にあるのよ。」
「俺たちは、みんなそうさ。」
「本当は、全部忘れてしまいたい。でも、忘れられないの。あの厳しい戦いの毎日を、私は忘れる事が出来ない。
気がつくと周りはどんどん新しく生まれ変わっている。まるで、自分だけが、取り残されていくようで辛いわ。」

「そうだね・・・。」

南部も気が付いていた。
どんなに、どんなに家族の温もりに包まれても、どんなに穏やかな日常に身を置いても、自分の心の奥のずっと深いところには、どうしても癒されないものがあることに。


「南部さんは、なぜ、防衛軍に残ったの?」

ユキは、南部を真っすぐに見つめている。

その時、彼女の長い髪が風に揺れて、首筋の細いチェーンが、月明かりに光ったような気がした。


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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑬

「さあ・・・。なんでかな・・・。」

ユキの問いに南部は答えられなかった。

―防衛軍に残った理由か・・・。

もちろん、理由はいくつかある。復興途上の地球のために尽くしたいし、そのために自分が出来ることをしたかった。

しかし、それだけではない。

もしかしたら、あの凄惨な戦いの記憶に心を苛まれながらも、その中にしか生きる目的を見出だせないのかもしれない。
未だにこの新しい地球に馴染めないでいる事の証なのかもしれなかった。

「他に思い付かなかったから。俺は、他に、生きる方法を知らないんだ。」

南部の言葉が、暗い丘の上に響いた。
自分でもはっきりとわからない事を、他人に説明できるわけもない。かと言って、適当にその場かぎりの嘘をつけるほど、いい加減な人間ではなかった。
出来れば、この一言で、この話題は終わりにしたかった。


「そうなの。」

ユキは、ふふっと笑って空を仰いだ。

「同じ事を言うのね。あなたも…。」

南部はそんなユキの横顔を黙ってみつめていた。
白い首筋に小さな星が、キラキラしている。丘の上に吹き上げる風がその輝きを僅かに揺らしていた。

「古代も、そんな風に言ったの?他に生きる方法を知らないって?」
「ええ。それから、こうも言ったわ。『宇宙に出てる方が性に合ってるんだ』って。」

―はっ!バカ言ってるよ!

ユキの言葉を聞いて、南部は心の中で吐き捨てた。

―あれほど求めた家族の愛じゃなかったのか。やっと、帰れる場所が出来たっていうのに。大切な人をほったらかしにして、何が宇宙だよ。


南部はユキの寂しそうな横顔を見ながら、古代の困った顔も思い浮かべてみた。
そして、南部はため息をついて、心にもない事を口走っていた。

「わかるよ。なんとなく・・・。古代の気持ち。」

―わかるもんか!あのバカの気持ちなんか!

南部の胸の奥では、相反する2つの感情が渦巻いている。
本当は、わからないわけでもない。南部も、現に、艦隊勤務を希望して宇宙に出ている。大切な家族を残して・・・。
様々な葛藤を一先ず乗り越えて、家族の元に帰ってみたものの、南部も古代同様、どういうわけか宇宙から離れられないのだ。

しかし、ユキの寂しそうな顔を見せられると、自分の事は棚に上げて、無性に腹がたつ。


―ああ・・・。駄目だ。

南部は頭を振って立ち上がった。
そのスラリとした背中を、丘の上の白布の像が見下ろしている。

「やっぱり、帰ろう・・・。送るよ。」

南部の諦めたような後ろ姿を、ユキは慌てて追いかけた。


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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑭

二人は丘を下りて、もと来た道を戻って行った。市街地に続く一本道の先には、明るい街の灯りが見える。
黙って歩く南部の後を、ユキは言葉もなく歩いている。
彼女は、先程までとはうって変わって、不機嫌な表情の南部に困惑していた。

「ねえ…。南部さん?」

遠慮がちに声をかける彼女を、南部はチラリと振り替えって一瞥して、口元だけで微笑んだ。
無理に作った笑顔はすぐにわかる。
南部の横顔に浮かんでいたのは、いつもの穏やかな微笑みではなかった。

ユキは内心、困っていた。
今さら家に帰る気にもならないし、それに、そんなことをしたらかえって親に不審がられるではないか。
ちょっとした思い付きの嘘が、ユキの心を縛っていた。
それに、どうして南部が急に機嫌の悪そうな顔をするのかが、ユキにはわからない。

―疲れているのかしら…?

いや、そうではない、とすぐに打ち消した。南部の歩調は常に一定のリズムを刻んでいる。それも、来たときよりも、むしろ速いのだ。力強く歩き続ける彼の背中からは、疲れたような雰囲気は感じられなかった。
では何故…?
しかし、いくら考えても、思い当たることはない。

ユキは、まるで知らない人を見るように南部を見上げた。

「あの・・・。」

南部は、背後から聞こえる遠慮がちな囁きに、とうとう観念して足を止めると、静かに振り返った。

「なに…?」
「いえ、その…。」
南部は相変わらず、口元だけで無理に笑顔を作ろうとしている。

「あのね。もうエアカーも走ってないのよ。」
南部の真意はわからないが、ユキは仕方ないので、思いきって本当の事を打ち明けた。
「それに、今さら帰れないわよ。お友達のお家に泊めてもらうって言ってるのに、ママに嘘がバレちゃうじゃない。」

―ははっ。そうだよな。


南部はようやく、表情を緩めた。

「そうだね。」

意外にも、途方に暮れているのは、南部の方だった。

この心のざわつきをどうする事も出来ない。
本当は、どうしようもない鬱憤に窒息してしまいそうだ。
どうして、何もかも、自分の思い通りにはならないのだろうか。
ユキも、古代も、この街も。
そして、自分自身さえも、自分の思った通りには動けないでいる。


街の明かりは、もうすぐそこに近づいている。
周囲のざわめきが戻ってくるのと反比例するように、ユキの胸元で光っていた星の輝きは、光を失ってしまった。

─古代・・・。いま、何してる?

見上げた夜空は、街の明かりが反射して白くかすんでいる。

南部はズボンのポケットから携帯を取り出すと、音も立てずに操作した。
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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑮

―まったく…!

島は、面白くない。
久しぶりに再会した仲間たちと飲み明かそうと思っていたのに、この状態は一体何なんだ。

─クソっ。南部のヤツ。

南部とユキが行ってしまってから、残された3人は結局、相原の新築の宿舎に転がり込んでいた。
帰還後、母親と同居していた相原だったが、故郷北上の旅館を再開するめどが立って、母親が帰郷したのを機に、自分は防衛軍の宿舎で一人暮らしをする事にしたのだった。

まだ、新しい建物の臭いが充満するマンションの部屋は、こじんまりとしているが、男の一人暮らしには十分な空間だ。
キッチンとリビング、それに洋室がふた部屋続きである。
食器棚や、ソファ、テーブル、ベッドなど、ひと通りの生活必需品は備え付けられていた。


明らかに機嫌の悪い島を横目にチラリとみて、太田は笑っていた。
「まあ、そう怒るなよ。」
太田は、スルメを噛みながらビールを飲んでいる。
島も、泡の消えかかったビールを惰性であおっている。
二人は、まだ引っ越しの段ボールが山積みのキッチンで、テーブルを挟んで飲み続けていた。
不味い酒だった。

「何だよ、相原のヤツ。人が、せっかく久しぶりの再会を祝って、飲み明かそうと思って来てるのに。」
「まあ、こいつもお疲れなんだよ。実家の引っ越しと、自分のところの引っ越しと、両方だったんだから。」
太田は、島のイライラには知らん顔で、笑っている。
彼には、島が、単に相原の事だけで機嫌を損ねたのではない事もわかっていた。

─南部!この埋め合わせはしてもらうぞ。

太田は、一人、ニヤリと笑った。

そんな太田の後ろで、早々に酔いつぶれた相原は、リビングのソファに倒れ込んでいる。
島は、苦い顔で、新しいビールの缶を開けた。

すっかり夜は更けて、窓の外は静まり返っている。
ここは、防衛軍本部からも遠くない、市内中心部にありながら、街中の喧騒からは隔離されているかのような静けさだ。
都市計画のなせる業か、それとも、ここの完全な防音対策の効果かは定かではないが、とにかく、外の空間との遮断は、完全に成功しているようだった。

島は、この静かすぎる部屋に、違和感を感じた。
隣人との関わりはおろか、外の社会との繋がりさえもが薄れていくような気がした。

「静かな夜だな。」

島は窓の方に目を向けた。太田もつられて、振り返った。
開け放たれた高層階の窓越しに、傾きかけた月が見えた。
街の明かりが反射して白くふやけた夜空に、ぽっかりと浮かぶ月は、心許ない光を放っている。
島は、ソファーで寝息をたてる相原に視線を落とした。

「馬鹿だな・・・。あれほど帰りたかった地球に帰ってこれたのに、また宇宙に出るなんて。」
「それ、誰のこと?」
太田は、とぼけてスルメを噛んでいる。
「誰って・・・。」
黙り込んだ島に対して、太田は飄々と言葉を繋いだ。
「俺たち、みんなさあ、何で宇宙から離れられないんだろうな。」

そして、立ち上がって相原の傍までいくと、その辺りの荷物の中から、適当に上着を引っ張り出してきて、眠りこんだ彼の上に掛けてやった。
「地球に帰りたくて、宇宙遊泳までしたのにな。こいつも、来月から木星だったっけ?」
「ああ。確か、途中から、古代と合流して帰還する予定じゃなかったかな。」

相原も、任務のために、再び地球を離れる日が近づいているのだった。

「俺たち、馬鹿だな・・・。」

太田の乾いた呟きが部屋に響いた時、不意に、誰かの携帯の着信音が鳴り響いた。


19:56  |  イスカンダル 帰還後のお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑯

太田は、鳴り止まない携帯を探して辺りを見回した。
この着信音は自分のものではない。島も同様にキョロキョロしている。

「相原のか?」

太田は、寝込んだ相原をひっくり返して、ズボンのポケットから彼の携帯を引っ張り出した。
携帯の表示で相手を確認すると、ちょっと驚いたように、へぇっと声を上げて電話に出た。

「もしもし…?」

太田は島に目配せをしながら、一言二言喋って、ニヤリと笑いながら電話を切った。

「誰?」
「意外なヤツ。」

そして、太田はその辺りに散らかった、空き缶やつまみの袋を簡単にまとめると、引っ越しの段ボールを部屋の隅に押しやった。

「どうしたんだよ!?急に片付けだして。」
「お前もその辺のゴミを袋に入れろよ。『大切な』お客様がくるんだからさ。」
「はぁ!?」

わけがわからない島を尻目に、太田は手際よくリビングを片付けた。

「あっちの部屋は仕方ないか。肝心の部屋の主が酔い潰れてるんじゃあ、勝手に荷物を動かせないし。」
島は、リビングの隣の洋間を見た。奥のベッドの周りには、洋服のはみ出した段ボール箱やカバンが無造作に置いてある。
「なあ、太田。さっきの電話、誰なんだ?」
「さあね。だいたい想像つくだろ。」

島が太田のつれない返事にカチンときて、そこら辺のタオルやら何やらをバスルームの方へ投げつけたとき、玄関のチャイムが鳴った。

「ほいきた。」

太田は、怪訝な表情の島をまるで無視するかのように玄関の扉を開けて、客人を招き入れた。

そして、太田の後ろから、遠慮がちにキッチンを覗きこんだのは、ユキだった。
「ユキ・・・。」

先程、タオルを投げつけたままの姿勢で立ち尽くし、目を丸くして彼女をみつめる島は、予想外の展開に完全に混乱して、すっかり毒気を抜かれてしまった。

「あのね、エアカーが・・・。もう走ってなかったものだから・・・。」

ユキは、恥ずかしそうに笑った。

島は慌てて、部屋の入り口で所在無げに立つ彼女に声をかけた。
「あ、ああ。まあ、入れよ。」

彼女はいつものように、ちょっと首をかしげて微笑んでいる。
「ごめんなさいね。男同士の時間を邪魔しちゃって。」
「いいんだ。君なら男も女も関係ないさ。君は特別だからね。」

―俺、何言ってるんだ・・・!

しかし島のその言葉に、ようやく安心したユキは、少し悪戯っぽく笑った。

「特別って、どういう意味?つまり、私は女として意識してもらえないって事かしら?」

そう言いながら、酔い潰れて眠る相原の上着をかけ直してやると、まるで猫かウサギを撫でるように、その茶色がかった髪を撫でて笑った。

―君は何もわかっちゃいない・・・!

彼女の何気ない仕草の一つ一つが、島の酔った頭を締め付ける。
その無邪気な横顔の美しさに、島は思わず息をのんだ。

その時、背後から声がした。
「遅くなってごめん・・・。」

島は、もう一人、自分の心も知らず、バツの悪そうな顔の男が居ることに気が付いた。

部屋の入り口でニヤケる太田の後ろには、南部が立っていた。


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2017.03/01(Wed)

若葉の季節 ⑰

―俺たち、馬鹿だよな…。

太田は、ユキの笑顔と島のぎこちない表情を見比べながら、欠伸をした。
既に、時間は深夜を回り、朝方が近くなっていた。
買ってきたビールを飲み尽くして、キッチンの宴会は終わりが近くなっている。

太田はキッチンの二人に笑顔を残して立ち上がると、窓辺の男に声をかけた。
「南部。なに見てるんだよ。」

呼ばれた南部は、ちょっと振り返って口元に笑みを浮かべている。
この男の無言の笑みは、本当は心から笑っているわけではない事を、太田はこれまでの付き合いの中で学習していた。
南部と並んで立つと、彼の背の高さを改めて感じた。
「どうかしたのか?」
太田は、背後の島とユキにチラリと視線を送りながら、南部に目配せした。
暗に、二人の事が気になってるんじゃないか、と言いたそうな太田の態度に南部は苦笑した。

確かに、この胸のわだかまりの原因はユキなのかもしれない。
おそらく、島の心のうちも、なかなか穏やかではないのだろう。
そんな事も知らず、ユキは結局のところ、古代の話ばかりしているのだから、笑えるじゃないか。
わかっていた事はいえ、人の心はなかなかに複雑だ。
自分は、一体何を期待していたのだろう・・・。
いや、何も期待してはいない。
それなのに、どういうわけか、胸の奥がジクジクと痛むのだ。

「いや、別に。」
そして、窓の外に浮かぶ月に目をやった。
「ただ、もうすぐ朝なんだなって思って。」

彼の言うとおり、月はすっかり西の空に傾き、その輝きもはかなげに白んでいる。
まだ空は暗いが、明らかに、真夜中の空の黒ではなくなっていた。

「今日は、もう帰って寝るだけか?」
と、南部は訊いた。
太田は、当然だろ、と言わんばかりに肩をすくめて笑って見せた。
「俺も。」
南部も眠たそうに笑った。


二人の背後では、殆ど眠りかけの姫の傍で、王子の親友が寝ずの番をしている、と言った体で、ユキの夜も終わりかけていた。
「おいおい。寝ちゃマズいだろ。」
太田のつぶやきも、結局姫の耳には届かなかったようだ。

まるで、魔法でもかかったように、ユキは静かに眠りに落ちた。

「さあ、これから、どうする?」
太田の一言を合図に、みんなの夜も終わりを告げた。

もう一時間もすればエアカーも走り始めるだろうが、この眠りこんだ姫をどうしたものか・・・。

すると、太田は嬉しそうにとんでもない事を提案した。

「このまま、置いて帰ろう。」
「はあ?」
島も南部も顔を見合わせて声を上げた。

「いいじゃないか。起こすものかわいそうだし、それにどうせ抱えちゃ帰れないんだから。」
「そりゃ、そうだけど・・・。」
島は、及び腰だ。
「それに、ちょっと面白いじゃないか。何も知らない相原が起きたら、どんな顔をするか。」
そして、一人だけ何も知らず、幸せそうに眠りこんだバツだ、と言った。

その太田のニヤケた顔に、南部は思わず噴き出した。
「それ、面白いじゃん。」

「でも、ユキも仕事があるんじゃないのか?起こしてやらないと、可哀想だよ。」
まだ踏ん切りのつかない島に南部は答えた。
「大丈夫さ。今日は休暇を取ってるって言ってたから。」

これで決まった。

二人の悪童に引きずられる格好で、島もしぶしぶ承諾して、三人はそっとユキを相原の真新しいベッドに運ぶと、自分たちは、もうひとつ奥の洋間に隠れた。
もちろん、彼らの眠気もピークに達しているため、あまり長くは待てない。
そこで、太田が、ソファの相原を覚醒ギリギリのところまで起こしにかかって・・・。


その後、相原の予想通りの大騒ぎに大笑いしながら、三人は寝ぼけ眼のユキに別れを告げて部屋を出た。

もうすぐ、朝日は昇る。
美しい地球の朝に、大あくびの男たちはそれぞれの帰路についた。


fin


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