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2016.11/13(Sun)

さよならをするために ①

宇宙に長くいると時間の感覚が鈍くなる。
あたり前のように昇っては落ちる太陽の光が届かない漆黒の空間だ。ここには、朝も昼も夜もない。
それでは生体リズムが狂うので、ヤマト艦内には、艦内時間が設定されていた。
一日24時間、一応、夜間の時間帯は照明を落とした上で、夜間専用の照明をつけるという念の入れようだ。
しかし、これも、戦闘のない、通常の航海時に限られるのだが・・・。

南部は夜間照明の灯りの下、居住区の長い通路を古代と二人で歩いていた。
二人は、目も合わさず、言葉も交わさず、目的の部屋を目指している。
南部は、部屋の鍵をマスターキーで開けると、照明の落とされた部屋の明かりを手探りでつけた。

部屋の中には、二段ベッドと二つのデスク。
二人用にしては狭い部屋・・・。
突然、主を亡くしたその部屋は、まるで、今日の日を予期していたかのように片付いていた。

「根本・・・。杉山・・・。」

古代は、無表情なまま、ぽつりと二人の名前を呼んだ。
この間の、冥王星基地の破壊工作に参加して、帰らぬ人となった戦友たちは、同室の2人だった。

ベッドを片づけ、デスクの中身を鞄に詰める・・・。
この単純な作業が辛い。つい、昨日まで、ここに息づいていた二人の臭いが浸み込んでいる。

南部も、古代も一言も発せず、小一時間ほどで作業を終えた。
ただ、二人の顔は、悔しさとも悲しさともわからない涙で濡れていた。


     ◆     ◆     ◆

翌日、艦長の配慮により、乗組員全員の地球との最後の交信が許された。
ささやかな、フェアウェルパーティーが催され、みな、今日ばかりは戦いを忘れて楽しんでいる。
交信室の前には、長い列ができていた。

家族の写真を手に手に、賑やかな通路のわきを抜けようとしたとき、南部はユキに呼び止められた。
「南部さん。まだでしょう?」
ユキは、南部も当然交信すると思っているのだろう。
「ああ・・・。また後にするよ。これだけ並んでちゃ、いつになるかわからないだろう?」
南部は、出来るだけ自然に、ごまかした。
「でも、南部さん。できるだけ早く済ませて下さいね。交信の状態は時間ごとに悪くなっているのよ。」
「了解。」
南部は、ユキの手前、本当のことが言えなくて、口先だけで適当に返事をすると、足早にその場を離れた。

しかし、今日ばかりは行くところがない。
この華やいだ雰囲気の中、南部は身の置き所がなかった。
かといって、用事もないのに第一艦橋に戻れば、事情を知らない徳川さんあたりに急かされて、また交信室にいくふりをしなければならなくなる。
考えるのも、億劫だった。

南部は、仕方なく居住区に向かった。
自室で、音楽でも聞いて時間をつぶそうか・・・。
居住区に近い通路で古代に会ったのは、ちょうどそんな時だった。

「おう。南部。お前こんなところで何してるんだ?」
それはこっちのセリフだと、南部も苦笑いだ。

二人は連れ立って、居住区の談話室でコーヒーでも飲むことにした。
古代は、南部の『事情』を知る、数少ない友人の一人だった。

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15:08  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ②

「ふうん。それで、一人でぶらぶらしてたわけだ。」

古代は、南部を一瞥すると、談話室のソファに深く座って、熱い紅茶をすすった。
南部も古代の横に座ると、温かいカップを両手で包んで、そっとコーヒーに口をつけた。古代よりも一回り大きな背中を丸めてコーヒーをすするたびに、眼鏡がうっすらと曇っている。

「なあ、南部。」
古代は手元の紅茶に視線を落としたまま、呟いた。
「地球と交信して来いよ。」
南部は、黙って友人の横顔を見た。淋しそうな顔だった。

「その必要はないよ。」
南部は、抑揚のない声で反論した。
「俺は、自分から家を出たんだ。南部の家とは、もうとっくに縁を切ってる。」

「ふうん。まあ、お前がそれでいいんなら、俺はいいけどね。」

古代が、こんな言い方をするときは、きまって何か言いたいことがある時だ。
何年も寝食を共にしたきた古代の言いたいこともだいたい見当はついた。

南部は、ため息をついた。
「何だよ。言いたいことがあるなら、はっきり言えよ。」

しかし、古代は俯いたまま、何も言わない。
それっきり黙って、冷めかけの紅茶をちびちびすすっている。

南部はそんな古代の態度に、なぜか無性に腹がたった。そして、一瞬の激情が噴き出した。
「古代、何だよ。何で言わないんだよ!ハッキリ言えよ!」
                                                    
古代は、一瞬驚いて目を丸くしたが、すぐに先程までのポーカーフェイスに戻った。
「お前が、実家の家業を嫌うのは、わかる気がするけどさ。そりゃ、殺し合いの道具を売った金でいい暮らしなんかしたくないよな。」
古代は、南部をまっすぐに見た。
「じゃあ、何で、お前はここにいるんだ。何で銃を持って戦ってる?」
南部は、言葉もなく古代を見つめた。
「俺たちは、南部重工業の技術を結集して作り上げた艦に乗って、南部重工業製の武器を手に戦ってるんだ。それも、否定のしようのない現実だよ。」

古代の言葉は、南部の胸をえぐった。
15:13  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ③

並んで座っている二人の間には、重苦しい沈黙が流れた。
古代は、また、元のだんまりに戻った。

その時、一瞬、談話室の明かりが消え、すぐにまた灯った。
ヤマトの夜が、始まる合図だ。

「もう、こんな時間なんだな・・・。」
南部は、ぼんやりと天井の明りを見上げた。
その言葉につられるように、古代も天井を見上げた。
「南部・・・。ごめん。俺、嫌なことを言ったよな。」
「いや。いいんだ。本当のことだから。」
南部は、天井を見上げたまま、長く息を吐き出した。

「古代は、何で戦うんだ?地球のためか?」
「いや。」
古代は、すっと立ち上がった。
「ただ、ガミラスが憎い。それだけさ。」
視線を落として立つ古代の表情は、髪に隠れてよく見えなかったが、その声は、普段の古代からは想像もつかないほど、小さく、消え入りそうな声だった。

「俺は、何不自由なく育った。優しい両親、穏やかな家庭。欲しいものは、何でも与えてくれる。だが、俺は知ってしまった。俺たち家族の平穏な生活は、多くの人間の血の上に成り立っていたんだって。親父はそれを、ビジネスだと言った。需要があるから、供給するんだと。」

古代は、ソファの前に突っ立ったまま、振り返りもせずに、南部の告白を聞いている。

「そして、言ったんだ。戦争と平和は表裏一体だ。平和の裏には、常に戦いがあるんだって。」

そして、南部は苦しそうに、吐き出すように言った。
「それなのに、ガミラスとの戦いが激しくなってくると、自分たちは、一番に地下都市に避難した。平和をもたらすために武器の供給はするが、その戦いは他人に任せるってことさ。」

南部は、手に持っていたコーヒーカップをテーブルに置くと、両手を膝の上で、ギュッと握りしめた。
「それなら、俺は戦ってやる。実際に自分で戦ってやるって。それで、家を出た。宇宙戦士訓練学校に入学すれば、住むところはあるし、食事も付いてる。おまけに、成績優秀者は、奨学金を受けることだってできる。」

「そうか。」
古代は、飲み終えた紅茶のカップを奥のカウンターに片づけた。
「まあ、理由はどうあれ、俺たちに残された道はほかにないってことさ。この戦いに勝って、イスカンダルにたどりつかない限り、この先、次には進めないんだ。俺も、お前も。」

古代の言葉に不思議な力を感じる。

「俺は、行くところがあるから。じゃ、また後で。」
古代はそう言って談話室を出ようとして、ふと立ち止まった。
「そういえば、真田さんが言ってたんだけど、ヤマトの装甲、発進の2週間くらい前になって急に強度を増す処理をしたって。南部重工側の申し入れだそうだ。おかげで、当初の予定の1.5倍の強度だって、真田さん喜んでたぞ。」
「・・・?」
「2週間前っていったら、俺たちの乗艦が決まったころだよな。」

南部は、息をのんだ。
─まさか・・・!

「どうせ、何も言わずヤマトに乗ったんだろう?別れの挨拶くらい、してくるもんだ。」
「古代…!」
「俺たちには明日はないかも知れないんだ。それに、明日がないのは、地球も同じだろ。お互い、いつどうなるかわからないんだ。生きてるうちに、さよなら、くらい言っとけよ。」
「古代・・・。」

「南部。お前の親は生きてるじゃないか。どんなに憎くても生きてるじゃないか。」
「古代・・・。」
「地球との交信は済ませとけよ。これは班長命令だ。」

古代は、淋しそうに笑った。


15:17  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ④

「ああ、南部さん。よかった。あんまり遅いから、今呼びに行こうと思ってたところよ。」
交信室の前まで行くと、ユキが笑顔で近づいてきた。
「ごめん。ちょっと、他で用事があったもんだから。」
南部は、適当に言い訳した。
「後は、古代くんだけね。」
乗組員名簿を片手に、ユキはため息をついた。
─古代は、来ないよ・・・。森さん、古代のこと、知らないのかな・・・?

南部も、ユキに気付かれないように、そっとため息をついた。

─本当は、俺も来るつもりなんて、なかったんだ。でも、古代にあんな風に言われると・・・。

交信室の前に長く延びていた人の列は、もう、あと5人ほどになっていた。
南部は、整理のつかない心の内をごまかすように、ユキに話しかけた。

「森さんは、もう地球との交信は済ませたの?」
「ええ。手の空いた時に済ませたわよ。」
ユキはにっこりとほほ笑んで、南部を見上げた。
─森さんって、きっと育ちがいいんだろうな・・・。
南部は、ユキの屈託のない笑顔が好きだった。
こんな殺伐とした、明日をも知れない戦いの中にあって、ユキはいつも温かい笑みを向けてくれる。

「きっと、ご両親は心配してるんだろうね。」
南部の言葉に、ユキの表情は複雑だ。
「ええ。パパとママの顔を見たら・・・。悲しくなっちゃって。少し、泣いちゃった。」
そして、ふふっと笑った。
「でもママったら。お見合い写真ばっかり見せるんですもの。」
南部は、あまりに意外なユキの言葉に、思わず吹き出した。
「ええっ?森さん、結婚するの?」
「まさかあ!結婚なんてしないし、第一、お見合いなんてしないんだから!」
ユキは、真っ赤な顔をして口を尖らせた。
南部は、ユキのそんな表情をみて、思い当るところがあった。
「へえ。森さん、もしかして、ヤマトの中に誰か好きな人でもいるの?」
「ちょっと!南部さんまで!もう、知らない!」

─図星か・・・。森さんの好きな人って、アイツかな・・・?それとも・・・。

南部は、ユキに謝りながら、同僚の顔を思い浮かべていた。

     ◆     ◆     ◆ 

そうこうしているうちに、南部の順番になってしまった。
出来ることなら、このまま引き返したい。
─今さら、いったいどの面下げて・・・。
南部の心は揺れ動いていた。

それは、南部が家を出てから、3年という月日をかけても断ち切ることのできなかった、情の証しでもあった。
断ち切ることもできなければ、受け入れることもできない・・・。
その厄介な感情が、南部自身を苛んできたのだった。

ユキは、南部を交信室に押し込んだ。
南部の心のうちの葛藤など、知るはずもない。
南部を、交信機の前に座らせると、その傍で、使い方の説明をしている。
南部は、このタイプの交信機の使い方なら、知っていた。南部だけではない。おそらく、第一艦橋詰めの乗組員はみな扱えるはずだ。
しかし、南部は黙って、ユキが説明するに任せていた。

傍でユキが動くたびに、ふわりと、何か甘い匂いが鼻をくすぐる。
自分には、決して無い匂い─
南部の胸に、説明のつかない感情がこみ上げた。

それは、女の人の匂い・・・。おそらくは、遠い昔に感じたであろう、母の匂いだった。
15:20  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑤

ユキが出て行ってしまうと、とたんに交信室の空気は無機質なものに変わった。
聞きなれた電子音と、遠くから響くエンジン音が、南部の体を包み込む。

南部は、交信機の椅子に座ったまま、ピクリともしなかった。

─・・・。

そうして、どのくらいの時間が過ぎただろうか。
おそらく、それほど長い時間では無かったはずだ。1分か2分か、その程度の時間が、南部の周りだけ恐ろしくゆっくり流れていった。

─クソ・・・!

とうとう、南部は、目の前のキーを操作して、次第に像を結ぶモニターを、じっと凝視した。


「お、お坊ちゃま・・・!」
画面に現れたのは、お手伝いの女の子だった。歳は18、9くらいの彼女は、父親が南部家の運転手しをしていた関係で、子供のころからの顔見知りだった。
「ちょっと、お待ちください!」
彼女は、突然のことに慌てて、誰かを呼びに走って行ってしまった。

誰もいなくなった画面の向こうには、懐かしい、リビングの風景が映し出されていた。ソファもテーブルも、その向こうに見える飾り棚のカップの数まで、南部が家を出た時と何ひとつ変わっていない。こうして見ていると、リビングの隣の台所から流れてくる、コーヒーの香りまでしてくるよう不思議な気分だった。

モニターには映っていないが、その向こうでは、どうやら使用人たちが騒いでいるようだった。

─そりゃ、そうだよな。何年も音信不通の放蕩息子が、何の前触れもなく宇宙から交信してきたんだもんな・・・。

南部は、画面の向こうの雑音に、思わず苦笑した。


懐かしい我が家・・・。幼い日の温かい記憶・・・。
一瞬、懐かしさに目を閉じた南部が、次に見たのは、驚きに眼を見開いた母親の顔だった。

     ◆     ◆     ◆

「康雄・・・!」

南部の母親は、長身に長い黒髪の映える、美しい人だ。
しかし、どこか、線の細い、儚げな人だと、南部は思う。
久しぶりに見る母は、少し痩せて、やつれて見えた。

「久しぶり・・・。」

南部は、母親の視線を避けるように俯いた。
なんと言っていいか、次の言葉が出てこない。古代に言われたとおり、ただ別れのあいさつをしておこうと思っただけなのに、いざ、こんな母親のやつれた顔を目の前にすると、どんな言葉も出てこないのだ。

「あなた・・・。よく無事で・・・。」
母は、泣いていた。
「あなたがヤマトに乗ると聞いて、ひと目逢いたいと思って、あの日、街に行ったのだけど・・・。凄い人ごみで、どうしてもあなたの姿を見つけることが出来なかったのよ。」

あの日の、見送りの人ごみにもまれて、母は必死に自分を探していたのだと思うと、南部は、胸が痛んだ。
古代の言うとおり、一言『行ってきます』と言えば良かったのに・・・。

「少し、痩せたみたいだけど、大丈夫なの?ちゃんと食べてる?危ない目に遭ってるんじゃないの?」
俯いたまま何も言わない息子に、母は必死に語りかけてくる。
「大丈夫。心配しないで。」
南部は、やっとのことで、それだけ言った。

何も、母親をこんな風に泣かせるために、家を出たのではなかった。本当は、父親が憎いわけでもない。
ただ、違うだけなのだ・・・。

「母さん。もうすぐ太陽系を離れる。地球との交信もしばらくは難しくなるんだ。ガミラスとの戦闘も、激しくなってきて・・・、それで・・・。」

母親は、息子の言葉に息をのんで、両手で顔を覆った。

─ああ!クソ!俺、何言ってんだ・・・!

南部は、もどかしさに唇を噛んだ。
15:22  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑥

「母さん・・・。」
南部は、不用意な言葉で母親にショックを与えたことを悔やんだ。これ以上、話し続けることは、母にとっては酷なことかもしれなかった。

しかし、許された時間はあとわずかだ。
この機会を逃したら、もう二度と、自分の気持ちを伝えることはできなくなるかもしれないと思うと、南部は、是が非でも、たとえ母親を悲しませることになってでも、言っておきたいことがあることに気がついた。

「母さん・・・。」
母は、涙をぬぐって顔をあげた。
「戦いは激しくなってきたけど、大丈夫・・・。ここには仲間がいるから。」
南部は、無意識に仲間という言葉を口にして、その温かい響きにふっと頬を緩めた。
母親は、息子のそんな表情の変化を見逃さなかった。
「そう。仲良くやってるのね?良かった。」
母の精一杯の作り笑いは、かえって悲しみの大きさを物語っていた。
美しい頬に赤みはなかった。


「俺が今、ここで何をしてると思う?もしかしたら、もう知ってるのかな・・・。俺、ヤマトの砲術長なんだ。」
モニターの向こうの母親は、驚かなかった。

─やっぱり、知ってたのか・・・。

母親は、息子が、その若さでヤマトの砲術長に抜擢されたことを知っていた。南部重工の商売柄、そのくらいの情報はどこからでも転がり込んでくる。
息子に決して明かすことはできないが、訓練学校での成績も生活ぶりも、果ては交友関係まで、母親の耳には届いていた。

「俺は、ヤマトに乗って初めて、本物の大砲をうった。ヤマトの主砲の威力は凄いよ・・・。南部の技術は本物だね。」
南部は、自分自身を奮い立たせて、言葉をつなぐ。
「・・・力を生み出すものは、その力の使い方を知らなきゃいけないんだ・・・。家を飛び出した時は、そんな事まで考えてなんかなかった。ただ、感情的になって、反発してただけさ。でも、実際に、銃を手にして戦ってみて気づいたんだ。この力を無制限に使っちゃいけないんだって。そうでなきゃ、あんなもの、ただの人殺しの機械じゃないか・・・。」
南部は、胸のうち息苦しさもろとも、吐き捨てるように言った。

「それで、康雄は、軍人になったの・・?」
母親の声は、以外にもはっきりとしたものだった。
「それであなたは、力を使う人になったのね。」

力を使う人・・・母親の言葉には、悲しい響きがこもっていた。

母親の瞳に射抜かれて、南部は言葉を失ってしまった。

しかし、ここであきらめるわけにはいかなかった。
南部の本当に伝えたいことは、他にあるのだから。

「母さん。聞いてよ。地球に居たって、緩慢な死を待つだけだ。それに、俺は、高みの見物なんてしたくなかったんだ。俺は、この手で、平和を勝ち取りたいんだよ!」
この数年来持ち続けてきた、心のわだかまりを一気に吐き出すように、大きな声を張り上げた。
一旦、心のタガが外れてしまうと、南部は自分でも何を言っているのか、何が言いたかったのかもわからなくなってしまった。
「平和のために戦うなんて、ナンセンスだよ。だけど、他にどうしようもないじゃないか。俺は、まだ諦めたくないんだ。地球も、自分も、何もかも!」

まるで、南部の叫び声が合図のように、モニターの画像が乱れ始めた。

「母さん!俺は帰る。きっと帰る。この戦いを終えて帰ったら、そしたら・・・!」


交信は切れた。
モニターの明かりは消え、再び訪れた静寂と、規則正しい電子音が南部を包み込む。

南部はうなだれたまま、指一本動かすのも、億劫だった。

15:27  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑦

南部は、居住区へ続く通路を、足元を照らす常夜灯の明かりを頼りに歩いていた。
数メートル間隔でほのかなに足元を照らす灯りのオレンジ色が、一定のリズムで南部の横顔を朱に染める。
うなだれて歩く後ろ姿からは、とても、砲術長として声を張り上げている普段の彼の姿を想像することはできなかった。

─誰にも会いたくない・・・。

幸い、居住区に人影はなかった。

南部は、自室にたどりつくと、灯りもつけずベッドに倒れこんだ。
乱暴に靴を脱いでその辺りに散らかし、サイドテーブルの上の時計を、手で払いのける。
床に転がった置時計の、硬質な衝突音が、無性に癇に障った。

南部は、次の瞬間、衝動的に眼鏡を外すと、その時計めがけて投げつけていた。

とたんに、南部の視界がぼやけてくる。
ベッドの縁に座って、頭を抱えて、そして、声を殺して泣いた。

何も話したくないし、何も考えたくなかった・・・。


     ◆     ◆     ◆

気がつくと、もう、当直の時間だった。
こんな日に夜勤当直なんて、どうしてこんなに間が悪いのだろう。
本当は、誰かに代わってもらいたいところだが、そういうわけにもいかない。
それに、交代の理由を探して、誰かに頼むのも面倒だった。

シャワーを浴びて、着替えながら、何気なく鏡を覗きこんで、驚いた。
泣きはらした目がむくんで、ひどい顔だ。
─何て、顔だよ・・・。
南部は、鏡の中の自分に、力なく笑った。
鏡の中の自分は、まるで知らない顔をして、うっすらと笑い返してくる。

『きっと帰る!この戦いを終えて帰ったら・・・!』
もし、あと少し時間があったなら、自分は、あのあと何と言ったのだろうか。
南部は、もう一人の自分の視線に耐えかねて、むくんだ眼を伏せた。


─とにかく、急がなきゃ。
当直に遅れるわけにはいかない。
慌てて身支度を整えて、眼鏡を探した。

─ああ・・・。

フレームの曲がった眼鏡の残骸が床の上に転がっていた。




15:28  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑧

南部は、時間ぎりぎりに、第一艦橋に駆け込んだ。
今日の当直は、確か真田とペアのはずだ。
日頃から時間厳守は当然のことだが、特に真田はその辺りのことには厳しかった。
決して後輩を叱りつけない温和な態度も、余計に凄味があった。

─あれ?

しかし、予想に反して、第一艦橋で待っていたのは、ユキだった。
息せき切って走りこんできた南部を振り返って、にっこりと微笑んだ。

「すべり込みセーフね!」
ユキは、南部の慌てた顔を、嬉しそうに眺めた。
「あれ?今日の当直は真田さんじゃなかった?」
「そうなんだけど、どうしても今日中に仕上げたい仕事があるから、当直代わってくれって頼まれちゃって。」
「そうなんだ・・・。」
南部は、正直、ホッとした。
決して、真田のことがけむたいわけではなかったが、比べれば、ユキとの当直の方が断然気楽に決まっている。それに、今日は特に、真田に自分の心の奥底まで見透かされそうな気がして嫌だった。ユキの楽しそうな笑顔を見ていると、さっきまでのささくれ立った心が、次第に和らいでいくような気がした。


二人はそれからしばらくの間、淡々と職務をこなした。
計器の数値を読み、記録しする。平時の当直の仕事なんて、それくらいのことしかない。
あとは、艦内時計が朝になるまで、何事もないことを祈りながら、静かな時間を過ごすのみだ・・・。

ひと通り終えると、南部はとたんに手持無沙汰になった。
いつもなら、ユキと他愛のない話でもして、時間を潰すところだが、今夜はさすがにそんな気分になれなかった。ユキとまともに向き合って、むくんだ顔をさらすのも気が引ける。

仕方なく、今後の作戦計画でも練り直すことにして、コンソールの上に資料を広げた。

実際、計画の変更は切迫した事案だった。
ガミラスの攻撃は、予想以上に厳しく、執拗だ。その上、外宇宙に出れば、何が起こるかわからない。
あらゆる面から、検討しなおす必要に迫られていた。


しかし、やっぱり、駄目だった。
南部は、資料の上にペンを放った。

─だめだな・・・。俺・・・。

南部は、コンソールに頬杖をついて、ため息をついた。
数時間前の母親との交信が、頭の中で何度もプレイバックする。泣きながら南部の話を聞いていた、母の面影が、目の前に浮かんできて、どうしても、職務に集中できなかった。

南部は、久しぶりに静かな夜を、恨めしく思った。




15:30  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑨

「南部さん。」
ユキが、少し遠慮がちに声をかけてきたのは、そんな時だった。

「なに?」
南部は、半分だけ振り返って、返事をした。
「あの・・・。」
ユキにしては珍しく、何か、言いにくそうにしている。
─もしかして、森さん、俺の交信を聞いたんじゃ・・・!
南部は、平静を装って、ユキを振り返った。
「どうかした?」
ユキは、それでもちょっと考えるようなそぶりをしてから、ようやく、意を決したように話し始めた。

「南部さんに、ひとつ聞きたいことがあって・・・。」
「なに?」
「古代くんのことなんだけど・・・。」

南部は、ユキの質問が自分のことではなさそうだとわかって、半ばホッとした。
しかし、反面、古代のことを口にする時の、ユキの微妙なニュアンスに、かすかな嫉妬も覚える。

「古代が、また何か森さんを困らせるような事でもした?」
南部は、無意識に、少し意地の悪い言い方をした。
しかし、ユキは、そんな南部の様子には、気づかないようだった。
「ううん。そうじゃないのよ。悪いことをしたのは、私の方なの。」
そう言うと、自分の席から立ち上がると、俯き加減に歩いて、相原の席に座った。
「私、古代くんには身寄りがないって、知らなくって。お兄さんのことは聞いてたけど、ご両親のことは、知らなかったものだから。古代くんを、無理に交信室に押し込んでしまって・・・。」

─そうだったのか・・・。

ユキは、申し訳なさそうにうつむいて、唇を噛んだ。
南部は、ユキのそんな表情を、初めて見た。さっき、南部が駆け込んできたときに見せた笑顔とはまるで違う人のようだった。

ぬけるように白い横顔が、悲しみに揺れて、綺麗だった。

「南部さんは、何で古代くんのご両親が亡くなったか知ってるの?」
「古代は話さなかったの?」
「ええ。あとで佐渡先生に聞いたら、ガミラスの攻撃で亡くなったらしい、とだけ教えてくれたんだけど。」
ユキは、相変わらず、遠慮がちに聞いてくる。
多分、ユキ自身、他人の事情に踏み込むことに、迷いがあるのだろう。
しかし、聞かずにはいられない、そんな、切なさが伝わってくる。

「俺も、詳しいことは知らないけど。遊星爆弾の直撃を受けて亡くなったそうだよ。なんでも、バス停で、古代の帰りを待ってたところに、遊星爆弾が落ちたんだって聞いたけど・・・。」

ユキは、大きな瞳を見開いて、南部を見た。

ユキの全身に漂う悲しみが、切なくて、南部は目を伏せた。
15:32  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑩

「そんなに、気にしなくても大丈夫だよ。」
南部は、努めて明るく振る舞った。
どんな理由であれ、ユキの寂しそうな顔は見たくなかった。
「古代だって、森さんが悪気がないことくらいわかってるよ。」
「でも・・・。」
ユキは、相変わらず、浮かない顔だ。
「悪気はなくても、傷つけちゃったわ。」

─森さん。古代のために、こんな顔するんだ・・・。

南部は、こっそりユキの横顔を盗み見て、ため息をついた。自分のことでもないのに、どうしてこんなに気が滅入るのか、説明がつかない気持ちを、すっかり持て余してしまった。
ユキとの当直で、少しばかり弾んでいた気分も、行き場を失ってもやもやする。

─あーあ。今日は、何から何まで、最悪だ・・・。

南部は、手持無沙汰な指先を、コンソールの上で意味もなく動かした。
計器のランプはすべて、正常値を示している。聞きなれた電子音も、変りない。
相変わらず、静かな夜だった。

     ◆     ◆     ◆

「あらっ?南部さん、眼鏡・・・。変えたの?」

南部は、不意打ちを食らって、咄嗟にユキの顔を正面から見た。
「えっ・・・。」
さっきまで、浮腫んだ顔を見られまいとして、極力向き合うのを避けていたのに、うっかりユキを見つめてしまったのだ。
ユキは、大きな瞳を見開いて、何も言わず南部の答えを待っている。

南部は、咄嗟の言い訳に焦って、ユキの表情が、一瞬、曇ったことに気がつかなかった・・・。

「ああ。これ・・・。実は、いつものヤツのフレームが壊れてさ。眼鏡がないと仕事にならないから、いつもスペアを持ってるんだ。」

南部は、ぎこちなく笑って、眼鏡のフレームを人差し指で持ち上げた。

「そうなの・・・。その、黒縁眼鏡も、似合うわよ。」
ユキは、いつもするように、小首をかしげて笑った。
やわらかく髪が揺れ、少し甘い匂いが周囲を包み込む。
─いい匂いだな・・・。
南部も、ユキの笑顔につられて、自然と頬が緩むのを感じた。


「ところで、南部さんって・・・。」
ユキは、静かに続けた。
「あの南部重工の社長の息子さんだって本当?」

南部は、今度こそ、言葉を失った。

15:33  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2016.11/13(Sun)

さよならをするために ⑪

言わないことから、わかってしまう。

南部の一瞬の沈黙が、真実を語っていた。

「知ってたんだ・・・。」
南部は、視線を手元に落としたまま、ボソっと呟いた。
ユキは、予想外の南部の態度に、困惑していた。
「あの・・・。私、何か悪いこと聞いちゃったみたい・・・。」
それ以上、言葉が出てこない。

「いや。いいんだ。別に隠してたわけじゃないんだ。そのうち、みんなに知れることだと思ってたよ。」
しかし、その口調からは、決して南部が、その事実を積極的に知らせたくはなかったことがうかがえる。
「実は、ちょっと前から、生活班の女の子たちの間で噂になってたものだから。つい、気になっちゃって。」
「そうなんだ・・・。」
「でも、南部さん、ちっともお坊ちゃんらしくないから、私、最初は信じられなくて・・・。」

ユキは正直だ。
真正面からぶつかってくる。
ちっともお坊ちゃんらしくない、なんて、聞きようによっては失礼な言い方だが、南部は不思議と嫌な気はしなかった。

「親のことなんて、あんまり自分から切り出す話題でもないでしょ。それに、俺、親に反抗して宇宙戦士訓練学校に入ってもんだから、何か、バツが悪くて。それで、なかなか、みんなにも、言いだせなくってさ。」
南部は、そう言って、僅かに笑って見せた。

南部はまた嘘をついていた。
そして、その自分の嘘に、南部自身も気づいていないのかもしれない。
南部が親の話をしないのは、揺れる心をさらしたくないからだ。
最初から順を追って、整理し、もつれた糸を解していく作業が、南部には必要だった。
それは、南部の家と向き合うことであり、南部自身と向き合うことでもあった。

「そうなの。まあ、社長の息子でも、そうじゃなくっても、関係ないわね。」
ユキは、相原のインカムをつつきながら、一人で納得している。
「だって、南部さんは、南部さんだわ。」

南部は黙ってユキを見つめた。
ユキは相変わらず、相原のインカムを触っている。

─俺は、俺か・・・。

南部は、ふっと息を吐いた。
─わかってるさ。そんなこと。俺だってわかってるんだよ・・・。
南部は、ふと、母親の顔を思い出した。

─『もし地球に帰ったら・・・』

そうしたら、俺は、今度こそ、自分の足で歩いていく。
軍人として生きるか、そうではないのかはまだわからない。しかし、きっと、自分の足で歩いていく。
そしてきっと、会いに行く・・・。
その時こそ、過去の自分と決別できるはずだ・・・。

南部は、ぼんやりと、そんな事を考えながらも、まだ、自信が持てないでいた。

頭では分かっていても、感情がついてこないこともある。

南部には、まだ、時間が必要だった。



─ピピーッ、ピピーッ!

その時、けたたましい電子音が、南部の隣から鳴り響いた。
「どうした!?」
ユキは、訳がわからず、半泣きの顔になっている。
「突然、相原くんのコンソールから警告音が・・・。」
「えっ?どういうこと?」

二人であちこち探って見たが、警告音を止めることはおろか、その原因もわからない。
そうこうしているうちに、相原が血相を変えて飛び込んできた。
「もう!何するんだよ!どこか、触ったんだろう?」
ユキも南部もわけがわからず、相原がするに任せている。

すぐに警告音はやみ、代わりに、仁王立ちの相原に説教を受けることとなった。
どうやら、ユキが何気なくインカムを触っているうちに、相原のカスタマイズを変更してしまいそうになったらしい。
相原は、万が一、自分の仕様を変えられると業務に不都合が生じるので、第三者の侵入を未然に防ぐために、コンソールのあらゆる所にトラップをセットしていたらしい。

相原は、言いたいことだけ言うと、あくびをして出て行った。

南部は、ユキと顔を見合せて、笑った。



結論は先送りにしよう。
今は、愛すべき仲間たちと、この航海を成功させることだけを考えよう。

しばらくして、一瞬照明が落ちて、また点いた。
今日もヤマトに、新しい朝が来た。


fin
15:38  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

転機 ①

これで、何日になるだろうか。
オクトパス原始星団にさしかかり、ここの宇宙嵐のせいで、ヤマトは足止めをくらっていた。
幸い、ガミラスからの攻撃はない。
もっとも、こんな宇宙の難所に飛び込んでくる輩はそうそういないだろうが。

時間に限りのある航海で、これほどの日数をこの空域で浪費してしまうとは想定外だった。
もともと、想定に無いことずくめの航海ではあるが、なすすべもなく過ぎていく日をただ数えるのは、乗組員にとって大いに苦痛だった。

乗組員の精神衛生の状態も悪化の一途をたどっている。

昨日の、古代と島の喧嘩もその象徴だ。
将棋の勝ち負けなんて、どうでもいいようなことで、殴り合いの喧嘩までするなんて。
普段なら、考えられないことだった。

そして、そんな班長同士の喧嘩騒ぎは、その他の班員同士の関係にも、微妙な影を落としてしまった。

     ◆     ◆     ◆

その日、南部は、太田と連れ立って食堂に行くことになった。
珍しく、同じシフトの勤務だったので、どちらが誘うでもなく一緒に食事をすることになったのだ。

第一艦橋を出てしばらく歩くと、南部はいかにもだるそうに生あくびをした。
「あーあ・・・。たまらないなあ。一体いつになったら、この空域を脱出できるんだよ・・・。」
太田は、フンと鼻で相槌を打つ。
「俺たちだって、必死に抜け道を探ってるんだ。そんな顔しないでくれよ。」
実際、航海班は、不眠不休で航路探査にあたっていた。
「ごめん。あんまりやることが無いもんだから、つい。」
南部は、謝りながら、太田の横顔をちらっと見遣った。
しかし、太田の表情は案外明るい。
「まあ、もうしばらくの辛抱だと思うよ。この空域の8割がたは解析が終わったんだ。残りの2割の中のどこかに、抜け道があるはずだよ。」

「でも、太田。そろそろ、ここから脱出しないと、みんな限界だぜ。」

限界なのは、南部も同じだった。
戦闘がないのは、ありがたい。
しかし、この密閉された空間の中で、見通しもなく、毎日やることもないというのは、正直堪らなく苦痛だ。
特に、戦闘班は、他の各班と違って、非戦闘時はやることが極端に少ない。
武器の点検補修と作戦会議、それに、各自、訓練メニューをこなすこと─それが終わってしまえば、後は延々、暇なのだ。

「まあ。とりあえず、食べようぜ。ただでさえイライラしてるんだ。こんな時は、胃袋に血を集めた方が、余計なことを考えずに済むってもんだ。」

太田の言葉に半ばあきれながら、それでも南部は幾分、気が晴れた。
太田のおおらかな人柄は、稀有の妙薬だ。
二人は、何となく笑顔になりながら、食堂に入った。

ところが、入ってすぐ、二人は異変に気づいた。

いつもなら、各々、気ままに席を取って食事をしているはずの食堂までもが、どことはなくぎこちない雰囲気に包まれている。
見渡せば、一目瞭然。
各テーブルごとに、まるで色分けされているようだ。
戦闘班と航海班は二つに割れ、その他の班員が、その間を埋めるように席について食事をしている。

南部と太田は、顔を見合せてため息をついた。

面相臭いことになってしまった。
19:28  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

転機 ②

太田は、いつにも増して早食いだった。

南部も食べるのは早い方だが、今日の太田には負ける。
あっという間にプレートの食事を平らげると、セルフサービスのコーヒー入れてきた。

「南部。さっさと食べろよ。」
「お前が早すぎるんだよ。」

南部は、具のないスパゲッティをフォークにまきつけながら、隣に座ってコーヒーをすする太田に目くばせした。
太田がそれを察して、南部に顔を寄せてくる。
「何だよ。南部?」
南部は、声を落した。
「どうなってんの?こいつら。」

太田は、さりげなく周りを見回して、ああ、と頷いて南部を見た。
「この、テーブルごとに色分けされた状況ね。」
「何で、航海班のやつら、かたまって座ってるんだよ。」
しかし、太田は、まるで人ごとのようにシレっとしている。
「さあね。そんな気分なんじゃないの?」
「馬鹿言えよ!そんなわけないだろ。」
「だけどさ、それを言うなら、戦闘班のやつらだって同じだろ。反対側に、かたまってるじゃないか。」
「だから、そのわけを聞いてるんじゃないか。」

南部も食べ終わったプレートを下げると、コーヒーを片手に戻ってきた。
二人のヒソヒソ話は続く。

「だいたい、島と古代が悪いんだよ。おおっぴらに殴り合いなんかするから、こんなおかしな事になるんだ。」
「まあ、当の二人はもうとっくに仲直りしたみたいだけど?」
「それだよ。二人とも、班長の自覚がなさすぎるんだ。自分たちが大騒ぎしたら、周りの班員がどうなるかなんて、全然頭にないんだから。」
太田は、声のトーンこそ落してはいるが、その口調には批判の色がありありと出ている。
南部は、同僚のふくれっ面が面白かった。
「まあね。古代が喧嘩っ早いのは昔からだけど、最近は島もひどくなってきたよなあ。」
「古代に感化されたんじゃないの?」
南部は思わず、ぷっとふきだした。
「ははっ。島が古代に感化されたって!?太田、お前わかってないね。」
「何が?」
太田は、不服そうに聞き返した。

「あの二人、最初から似た者同士だろ。」
南部は、コーヒーを口に含んで、ゆっくりと飲み下した。
太田は、意外そうな顔をしている。
「そうかな・・・?」
「そうさ。島だって、一旦こうと決めたら、絶対に譲らないだろう?古代もそう。だから、二人はぶつかるんだよ。」
南部は、残りのコーヒーを飲みほして立ち上がった。
「とにかく、ここを出ないか?なんか、しゃべり辛くって堪らない。」

二人は、相変わらずおかしな空気の食堂を後にした。
双方の班員の視線を背中に感じながら・・・。
19:30  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

転機 ③

「まったく、面倒臭いなあ。」
南部は吐き捨てるように言い放った。
太田は、格納庫に向かう通路を並んで歩きながら、南部を見上げて笑った。
「他のやつらの様子が、そんなに気になるのか?南部も意外と繊細な心の持ち主なんだな。」
「お前は気にならないのか?」
すると、太田は少し皮肉っぽく、そして同情するような笑みを浮かべた。
「気にしたって仕方ないだろう?島や古代だけじゃない、みんな、イライラしてるんだ。おまけに暇ときてる。暇つぶしに、誰かがみんなを煽ってるんだよ、きっと。」

それにしてもムシャクシャする。
─一体、いつまでこんな状態が続くんだ・・・!
南部は泡立つような心の毒を、やっとのことでのみ込んでいた。

そんな、同僚の心を知ってか知らずか、太田は相変わらず、淡々としゃべり続けている。
そして、とんでもないことを言い出した。
「ここだけの話、外宇宙への通路なんて、あるかどうかの確証はないのさ。」
「えっ!?」
南部は驚いて立ち止まった。
「どういうことだよ・・・?」
太田は慌てて、シーっと指を口元に当てると、あたりを見回した。
「大きな声を出すなよ。」
「だって、この空域のどこかに、外宇宙に通じる抜け道があるから、こんな嵐の中に3週間もとどまって我慢してるんじゃないのか!?」
「まあ、落ち着けよ。」
太田は、もう一度あたりを見回して、人気がないのを確認すると、近くの物置に南部を連れ込んだ。
「他のやつらに聞かれるとまずいからさ。」
「太田。説明しろよ。」
太田は、小さなため息をついた。
「理論上は、あるはずなんだ、外宇宙への抜け道が。そこを通過するのが、一番の近道であることに間違いはない。この空域を迂回しようとすれば、それこそ、膨大な日数を費やすことになるだろう?」
「ああ・・・。でも、いま、その確証はないって言うから・・・。」
「確証はないさ。あくまで、理論上の話だからね。その抜け道を実際に通った地球人はいないわけだから。それに、そこを通ってきた宇宙人と遭遇したわけでもない。」
「なるほどね。」
南部は落着きを取り戻して、頷いた。
「こんな話、他の乗組員には漏らせないだろう?ただでさえ、みんな不安なんだ。」
「そうだろうな。で、太田。航海班はもちろんそのことを知ってるよな?」
「当然だろう。俺たちが航路を決定してるんだ。本当は俺たちだって、不安なんだよ・・・。」

南部は、島と古代の喧嘩の理由がわかったような気がした。航海班のやつらが、何となくよそよそしいわけも。
「それで、島のやつ、古代につっかかられて、まともに受けたのか。」
「多分、島も不安なんだと思うよ。航海長って肩書が、余計に意固地にさせてるのさ。」
太田も、仕方ないというように首を振って、ため息をついた。

「仕方ないな・・・。」
南部は、太田を伴って再び歩き始めた。
「格納庫まで付き合ってくれないか。あと始末をしてまわらなきゃならないからさ。」
「えーっ。格納庫は加藤の管轄だろう?放っとけよ。」
「その加藤も、古代と一緒にバツ掃除でひと騒ぎしたらしいんだ。艦長に聞こえると、また、厄介なんだよ。」
「ははっ。『南部。古代と加藤を呼べ!』ってか。」
太田は、昨日の呼び出しの件を思い出して、おかしそうに笑った。
「とにかく、付き合ってくれよ!」

南部は、ムッとして足を速めた。


19:31  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

転機 ④

太田は、黙って一歩前を歩く南部の後をついて行った。

─南部・・・。あと始末って、どう始末をつけて歩くつもりなんだろう。

太田は、南部の背中にただならぬ雰囲気を感じ取っていた。
黙ってはいるが、いつのも穏やかさはすっかり影をひそめ、殺気にもにた迫力が、南部の全身から立ち上っているようにも思えた。
それに、どうして自分を伴って行かなければならないのか、その真意がよくわからなかった。

二人が、格納庫の手前にさしかかった時、薄く開いたドアの向こうから、複数の乗組員の話し声が聞こえてきた。
はっきりとは聞き取れなかったが、どうやら、今回の航海班の対応を誰かが批判しているようだった。

太田は思わず眉をひそめた。
予想はしていたが、実際に、陰で自分たちを悪く言われている現場にでくわしたのだから、当然、いい気はしない。
それに、今回の航路選択については、自分の心のどこかに、どこかやましいようなところがあるものだから、余計に気持ちがざわついて、素知らぬ顔が出来なかった。

─クソっ・・・!事情も知らないで、勝手なこと言いやがって!

しかし、次の瞬間、眼前で起こった出来事に、太田はアッと息をのんだ。

それは、一瞬のことだった。
一歩前を歩いていたはずの南部の背中が、その瞬間、視界から消えたと思ったとたん、目の前のドアが急に開け放たれ、それと同時に、室内にいたブラックタイガー隊の隊員が一人、椅子から転げ落ちていた。
そして、もう一人は、胸ぐらをつかまれて、吊るしあげられている。

─南部・・・!

太田は、突然のことに声も出せなかった。

部屋の中にいた、3,4人のブラックタイガー隊の隊員は、普段は穏和な南部の豹変ぶりと、その恐ろしいほどの怒気に、言葉を失って立ち尽くしていた。最初に南部に殴り飛ばされた隊員も、その痛みというよりは驚きのあまり、転げ落ちた格好のまま、固まってしまっている。

南部は、部屋の中をゆっくりと見渡して、静かに口を開いた。

「不確かな情報で、仲間の陰口をたたくようなやつは、出て行ってくれないか。ただでさえ、みんなイライラしてるんだ。それを、自分の感情で、煽るようなことをする奴は許さない。仲間同士いがみ合って、ガミラスに勝てるのか。」

恐ろしいほどの静寂が部屋中に充満していた。

「言いたいことがあれば、いつでも言いに来い。納得がいかなければ、戦闘班長かお前たちの隊長に報告を上げろ。」

南部は、吊るしあげた隊員を放り投げるように解放すると、部屋を出た。
俯いた横顔が、少し、青ざめて見えた。

19:33  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

転機 ⑤

部屋を出てから格納庫に着くまで、南部は一言も口をきかなかった。
太田も、黙ってついて行くしかなかった。
─南部・・・。大丈夫かな・・・。
太田の心配をよそに、南部は淡々と歩いている。

しかし、太田は、格納庫の扉の前で南部が呟いた一言を聞いてしまった。
口の中でぼそっと、多分、太田に聞こえないように、それでも、つい言ってしまった一言・・・。
『さあ、いくぞ・・・。』

どうして、密かに気合いを入れる必要があるのか、太田にはわからない。
そして、元をただせば、どうして自分が連れてこられたのかもわからない。

太田は、南部の背中に、静かに充ちる気迫を感じた。

     ◆     ◆     ◆

格納庫では、ブラックタイガー隊員たちの、賑やかな出迎えを受けた。
ここでも、暇な者たちが、将棋をしたり、トランプに興じたりと、思い思いに時間をつぶしている。
皆、口々に、『南部さん!』とか『砲術長殿!』とか言いながら、手をあげたり会釈をしたりして南部に挨拶をした。
それに応える南部もまた、先ほどまでとはうって変わって、穏やかな笑みをたたえて、にこやかに応じている。
南部の管轄は砲術班だが、ブラックタイガー隊の中にも、すっかり溶け込んで、いい関係を築いている様子が伝わってきた。

─南部・・・。一体、何考えてんだ・・・?

太田は、南部の変わりように、微かな不安を覚えた。


「よう!砲術長!」              
 
仲間とコーヒーを飲みながら談笑していた男たちの一人が、振り返って手をあげた。
山本だった。
南部も、さっきとはうって変わって、にこやかに応じた。
「山本、暇そうだな。」
「なんとかしてくれないか。こんなに暇じゃ、体がなまっちまう。」
山本は、笑いながらコーヒーを飲んだ。
「ふふふ。それは、俺も同じさ。」
南部も、笑顔で肩をすくめた。
「で、出発はいつ頃になるんだ?」
「そんなこと、俺にわかるわけないだろう?それを決めるのは砲術班じゃないよ。それに、だいたい、嵐がおさまる予定なんて、誰にもわかりゃしないさ。」
南部は、太田の方をを振り返って、片目をつぶって見せた。

─・・・?
しかし、太田は、南部のウインクの意味がわからずに、ぽかんとしている。

山本も、チラッと太田の方を見て、そして、意味ありげな笑いを浮かべた。
「なるほどね。副航海長殿は航海の見通しがついたから、その説明に来てくれたってわけか?」

─えっ・・・!

太田は、思いがけない展開に言葉を失った。
「航海の見通しなんて・・・。それは、その・・・。」
山本は、相変わらず、ニヤニヤしている。
すがる思いで南部を見ると、南部もまた、笑顔で頷いているではないか・・・。
─南部ー!
太田は、やっと、南部の思惑を理解した。

─自分がここに居るのは、偶然なんかじゃない。
南部は最初から、こういう場面を想定して、太田を連れてきたのだ。
この、艦内の不穏な空気を、少しでも和らげるために。少しでも、乗組員の気持ちを安定させるために。
副航海長の一言が、どれほどの影響力を持つか・・・。
普段、意識したこともない自分の肩書が、これほど重たいとは・・・。

太田が一人慌てている間に、気配を察知した隊員たちが、太田の周りに集まり始めた。
みんなの期待が、太田にも伝わってくる。

太田は、南部の服を引っ張ると、小声で助けを求めた。
「南部!お前、事情は知ってるだろう!?説明なんてできないよ!」
しかし、南部は柔和な笑みを隊員たちに向けながら、太田の耳元にそっと囁いた。
「こうなったら、一発、はったりかませ!」

─はぁ!?

南部は、クスッと笑った。

「嘘でも何でもいいから、みんなを安心させてやってくれよ。確証もないのに、大見栄きった航海長の後始末だよ。」

─クソー!南部のやつ!

隊員に囲まれてもみくちゃにされる太田を一人残して、南部は加藤の居る格納庫最上段に消えた。


19:34  |  宇宙戦艦ヤマトのお話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.03/01(Wed)

転機 ⑥

やっとの事で、ブラックタイガー隊の隊員たちから解放された太田は、大きなため息をついた。
こうなってしまっては、航海班がいかに自信と責任を持ってこの艦を導いているか、太田は力説するしかなかった。
はったりもいいところだ。
山本は、そんな太田を、いかにも面白そうにに見ている。
「お疲れさん。」
言葉とは裏腹な、楽しそうな山本の顔が、太田の疲労感を倍増させた。
「人ごとだと思って・・・。お前も南部とグルか。」
太田の的外れな恨みごとに、山本は、とうとう吹き出した。
「はっ、まさか!ただ俺は、南部が意味ありげに目くばせするから、何となく、話を合わせただけさ。」
「勘弁してくれよ。俺たちだって、いっぱいいっぱいなんだよ。」
「まあ、そう言うなよ。」
山本は、太田に、傍の椅子をすすめると、コーヒーを淹れてくれた。
「おかげで、みんなの気持ちも多少は落ち着いただろうよ。先が見えないって言うのが、一番つらいからな。」
山本の言うことはわかる。太田にしても、先行きが見えないから辛いのだ。
二人は、隊員たちに背を向ける形で、並んでコーヒーをすすった。

太田は、ふと、格納庫の上部を見上げた。
「南部、遅いな。」
「ああ。加藤にはいろいろ言いたいことがあるんだろう。」
山本も太田につられるように、視線を上に向けた。

「南部も辛いところだろうよ。」

山本の言葉には、明らかに、いたわりの感情が含まれていた。

太田は、黙って山本の次の言葉を待った。
手元のカップから立ち上るコーヒーの香りが、ゆらゆらと二人の間に漂っている。

「ここは、若いやつが多いし、加藤と俺とで自由にやらせてもらってるけどさ。南部の方は、そういうわけにもいかないみたいだぜ。」
「どういうこと?」
「砲術班は、叩き上げの『先輩方』が結構いるんだよ。士官学校出の新人砲術長が仕切るのは、かなり骨の折れることだと思うよ。」
山本は、一度言葉を切って、格納庫の上を見上げた。
南部が下りてくる気配は、相変わらずなかった。
「古代のやつが、あんなだろう?戦闘に関しては天才的なんだが、それ以外は、まるでなってない。古代は人間関係の築き方が下手なんだ。それを、南部と加藤とでフォローしなきゃいけないんだが、加藤ときたら、古代に押されると、つい一緒になって騒いじまう。それで、南部の負担が増えるってわけだよ。」
太田は言葉もなく、山本の顔を見つめた。山本はそんな太田から目をそらすと、呟くように言った。

「南部って、本当は、あんなに社交的な奴じゃないと思うんだよなあ。だって、俺たちと呑んでても、いつも一人淡々と、って感じだろう?まるで、酒で自分を包み隠すようにさ。もしかしたら、ずい分無理して、あんな風にふるまってるんじゃないかな。みんなに気を使って、褒めたりすかしたりさ・・・。」

山本は、苦笑いの顔で、ため息を一つついた。

太田は、先ほどの南部の様子を思い出していた。
そういえば、ここに入る前、南部は静かに自分を奮い立たせていたっけ。
─『よし、いくぞ。』ってそういうことだったのかな・・・。


それからしばらくして、南部が加藤と一緒に下りてきた。
二人は穏やかに談笑しながら、それでも加藤は幾度となく南部に謝っていた。
南部も表面上は、いつもの、穏やかで愛想のいい男だ。

しかし、太田は、その様子を、複雑な思いで見つめていた。
もう、南部に一杯食わされて冷や汗をかいたことなど、すっかり忘れていた。

     ◆     ◆     ◆

太田は、南部と連れだって居住区に戻りながら、南部の横顔を見つめた。
南部も、そんな太田の視線に気づいて、不思議そうな顔をした。
「なに?さっきのこと、怒ってるのか?」
「いや、そうじゃないけど・・・。」
南部は足を止めた。
「じゃあ、なに?」
太田は、次第に、南部のことが気の毒になってきた。
山本が言う事は、恐らく当たっている。
この男は、燃える激情も、傷つきやすい心も、すべて胸のうちにしまい込んで、それを笑顔で覆い隠しているのだろう。
南部の笑顔は、無言の拒絶だ。

─自分の心をさらけ出すのを、恐れているのか・・・?

南部は、黙ったきりの太田の顔を心配そうにのぞき込んでいる。
太田は、慌てて、適当なことを言った。
「いや・・・。さっき、ブラックタイガー隊の隊員たちを殴っただろう?あれって、隊員たちを締めるための、作戦なのかなって。あれも、計算ずく?」

「えっ・・・。あれは・・・。」
南部は意外にも、バツの悪そうな顔をした。
「あれは、ただ、キレただけ・・・。つい、カッとなって。」

南部は、恥ずかしそうに笑った。

太田もつられて、笑った。


この翌日、古代と島の衝突が再び起こることも知らずに・・・。


fin







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